それでも「鉄道が必要」──三陸鉄道に見る「三陸縦貫鉄道復活」への道と将来:杉山淳一の時事日想(2/5 ページ)
東日本大震災から3年を経て、三陸鉄道が全線復旧した。鉄道以外にいくつかの手段が模索される中、今回それぞれの交通システムを体験して分かった。それでも「鉄道が必要だ」と。
「BRT」は地域交通手段として最善の選択
仙石線は高城町駅─陸前小野駅間が不通だ。この区間はバス代行運転となっている。ただし乗り換えの利便性を考慮して、代行バスの区間は少し広く、松島海岸駅─矢本駅間で運行している。加えて石巻線の浦宿─女川間も代行バスだ。どちらも観光バスタイプの車両のため、快適ではある。なお、両区間はJR東日本が鉄道路線として復旧させる計画だ。仙石線はルートを内陸部に変更して2015年度内に復旧予定。石巻線は女川駅を移設して再整備するがこの時期は未定だ。
気仙沼線の柳津駅─気仙沼駅間と、大船渡線の気仙沼─盛間はBRTで仮復旧されている。鉄道ファンとしては鉄道で復旧させてほしかった。しかし、復旧費用が膨大で、当然だが迅速な交通手段の復旧を優先するためにBRTが整備されたことが経緯だ。路盤が残っている区間はレールをはがし、アスファルトで舗装。路盤や鉄橋が流された区間は一般道を迂回する。
このBRTに乗ってみると、とてもよくできている。列車運行よりコストが低いこと、そしてバスの運用のしやすさもあって、震災前より運行本数が増えている。今まで線路だった部分にBRT専用道路を設けたので渋滞も発生しない。交差点は、鉄道時代と同じくBRTが優先される。交差点の300メートルほど手前にセンサーがあり、バスがそこを通過すると交差点へ到着するころに青信号になる。このため、運行時刻も正確だ。
BRT専用区間は1車線である。鉄道で言うところの「単線」で、道幅は狭くバスのすれ違いは難しいため、駅や駅間にすれ違いのための退避場所が作られている。これもどこかで集中管理されているようで、バスがいったん停止し、青信号が表示されると進行可能となる。ここはちょっと鉄道らしさを残していると感じる。整備されたばかりの道のため、バスの揺れも少なくて乗り心地は上々。トンネルで街と街を短絡するので、従来の路線バスより移動時間はずっと短い。
また、気仙沼線BRT区間には「ベイサイドアリーナ」、大船渡線BRT区間には「高田病院」など、メインルートから外れた駅も新設されている。これらの駅には役場や病院があり、地域住民にとっては鉄道時代より便利になったと言えるかもしれない。この区間の大船渡線はトンネルが多いので、これまでと違い、BRTは大きく迂回して国道を通る。そして住民(利用者)が多いのは国道沿い。鉄道ファンとしてはとても悔しいが、住民にはBRTのほうが使いやすそうだ。
JR東日本はBRTの運行開始にあたり、「新しい交通システム誕生」とかなり前向きにアピールしていた。このプロモーションは「鉄道は古い」というイメージを与える。鉄道を望んでいた人々も「新しいほうが便利で格好いいな」と思うだろう。
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