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それでも「鉄道が必要」──三陸鉄道に見る「三陸縦貫鉄道復活」への道と将来:杉山淳一の時事日想(3/5 ページ)
東日本大震災から3年を経て、三陸鉄道が全線復旧した。鉄道以外にいくつかの手段が模索される中、今回それぞれの交通システムを体験して分かった。それでも「鉄道が必要だ」と。
路線バスは、遅く、直通しないという現実
JR山田線の釜石駅─宮古駅間は、地元自治体とJR東日本の話し合いが難航している。JR東日本は当初、BRTの整備を提案していた。しかし地元は鉄道復旧を固持した。最近になって、JR東日本は鉄道で復旧させる代わりに、運行から手を引くという条件を出した。設備を復元し自治体に譲渡するので、以後の運行は三陸鉄道が担当してはどうかという上下分離案だ。
ただ、2014年4月の時点で話し合いの決着がついていないので、JR東日本は復旧工事に着手できない。実際に路線バスから山田線の線路跡を眺めると、海に近い部分は路盤も破壊されており、元の線路がどこか分からない状況だった。
JR東日本は代行バスも用意していないが、これには理由がある。この区間は地元のバス会社の路線が併走しており、同じ道路で代行バスを仕立てると縄張りを荒らす形になってしまう。協調案として、山田線の乗客は路線バスへ振り替え輸送を行っている。ただ、この振り替え輸送は定期乗車券と普通回数乗車券を利用する人に限られる。私のような旅行者はJRのきっぷでは乗れない。青春18きっぷなども使えない。
しかも釜石駅─宮古駅間を直通するバス便がないので、必ず乗り換えが必要になる。途中の「道の駅やまだ」がバス会社の路線の境界になっているからだ。ちなみに釜石から「道の駅やまだ」への路線バスタイプの車両、道の駅やまだから「宮古」までは観光バスタイプの車両だった。
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