それでも「鉄道が必要」──三陸鉄道に見る「三陸縦貫鉄道復活」への道と将来:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
東日本大震災から3年を経て、三陸鉄道が全線復旧した。鉄道以外にいくつかの手段が模索される中、今回それぞれの交通システムを体験して分かった。それでも「鉄道が必要だ」と。
発展する未来にとって「やはり鉄道は必要」
現在の三陸地方は鉄道の投資に見合わないかもしれない。しかし、この地域を観光、産業ともに発展させていくつもりなら、いずれバスやトラックの輸送力では足りなくなる。地域の将来の発展を見据えたとき、旅客、貨物の両面において、鉄道の輸送力が必要だ。
かつて仙台駅─三陸各地─八戸駅を結ぶ直通列車「リアスシーライナー」があった。観光客にとって、新幹線から仙台または八戸で1回乗り換えるだけで三陸の各地にアクセスできた。このような「仙台直通」「東京へ乗り換え1回で」という列車は、観光客だけではなく、移住希望者にとても重要な列車である。「新しい産業ができると決まったら、鉄道を整備します」では、ほかの誘致地域には勝てない。すでに直通列車があることが新産業の候補地選定とその決定に必要だからだ。
水産物、水産加工物の輸送については、貨物列車へのモーダルシフト(関連キーワード参照)を検討したい。現在、石巻から仙台へ、一日数本以上の貨物列車が運行されている。積荷は日本製紙石巻工場からの紙だ。紙を載せたコンテナ貨車は仙台で首都圏向けの列車に連結される。三陸縦貫鉄道を石巻までつなぎ、冷蔵コンテナを使えば、貨物列車の東京便に接続できる。
三陸縦貫ルートの車窓に、もはやがれきの山はない。見えない場所にはあるのかもしれないが、目にした元被災地はほとんど更地で、重機が活躍していた。復興住宅が散見される中、新築の戸建て住宅やアパートも多かった。少なくとも、私が見た三陸地域は荒野ではなかった。
とりあえずバスを通し、過疎化に手を打たず、静かにクローズしていくか。あるいは鉄道の再生をきっかけにさらなる発展を目指すか。三陸に住む人々、そして施政者は、郷土をどうするつもりだろう。
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