Facebookが2000億円出して買ったベンチャー「Oculus」って知ってる?:没入型HMDが普及する未来とは(3/4 ページ)
3月末にFacebookが約20億ドルもの大金を出して、米国のベンチャー企業を買収した。ゴーグル型HMD「Oculus Rift」を開発するOculus VRだ。なぜOculus Riftがここまで評価されているのか、そしてこうした没入型HMDが普及するとどう生活が変わるのだろうか。
コンテンツ制作の参入障壁が低い
優れたハードウェアがあっても、コンテンツがなければ楽しめない。ゲームをはじめとするエンターテインメント業界ではよくある話だ。しかし、Oculus Riftはハード面だけでなくソフト面もよく考えられている。200万人以上のゲーム開発者が利用する「Unity」というゲームや3Dコンテンツの開発ツールに対応しており、コンテンツ制作への参入障壁が低いのが特徴だ。
PC用だけでなく、PlayStation 3やスマートフォン向けのコンテンツも開発できる。Unityを使えば、家庭用ゲーム向けの高度な3Dコンテンツはもちろん、簡単なものであれば「プログラムを1行も書かずに作成できる」(アップフロンティア 代表取締役社長 横山隆之氏)というだけに開発者の裾野が広く、コンテンツが生まれやすい仕組みも持ち合わせている。
Oculus Riftのエバンジェリストとして活動するGOROman氏の動画「話題のOculusRiftでアッチの世界に入って来たついでにミクさんを触ってきた」は、日本初のOculus Rift向けコンテンツとして知られているが、GOROman氏の手元に実機が届いたのが2013年の4月末。この動画がアップロードされたのが5月5日なので、2週間も経たずに動画を公開したこととなる。事前に開発者用キットを入手して準備していたとはいえ、まさに“爆速”。Unityならではのスピード感だ。
あのセカンドライフがOculusで復活?
2005〜2006年ごろに「Second Life」という仮想世界のコミュニティーが盛り上がったのを覚えているだろうか。Second Lifeに詳しい米国のブログ記事(参考リンク)によると、Second Lifeの運営会社は、Oculus Riftへの対応を進めているとのことだ。一過性のブームが去って以降、鳴かず飛ばずのSecond Lifeも、Oculus Riftの没入感を手に入れて息を吹き返すかもしれない。
Oculus Riftで作成するコンテンツは、何も3Dのコンピューターグラフィックスだけではない。実写の映像からも作ることができる。「KMD Transnational Airport - the 4th KMD forum」という慶應義塾大学大学院のイベントに出品されていた「Hiyoshi Jump」がいい例だ。この作品では、Oculus Riftを装着しその場でジャンプすると、その場から高度数十メートルまで一気に上昇した後、360度周囲を見渡しながら、ゆっくり降りてくるという疑似体験ができる。
実際に試してみたところ、足がすくんでしまった。別に高所恐怖症というわけではないが、オシリの穴がキューッとした。これを作成したUnity Technologies Japanの伊藤周氏によると、クアッドコプター(4個の羽がついたヘリコプター)に360度撮影可能なカメラを装着し、急上昇・急降下した動画を撮影。動画から各コマを個別に抽出し、Oculus Riftの加速度センサーにより、上昇速度や高度をコントロールする形で各コマを使って、動画をリアルタイムで生成しているという。その動画はYouTubeで公開されているので、ぜひご覧いただきたい。
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