羽田の人気空弁「こめて KOMETE」──厳選ライスバーガーに込めた、ウマさの理由:東北発! 震災から生まれた21世紀の逸品(2/4 ページ)
東日本大震災を機に生まれた、知られざる「逸品」とは──。東日本大震災から3年、東京・羽田空港にお目見えした空弁「こめて KOMETE」が人気だ。東北の各地から集めたこだわりの具材を用いたこの商品は、いわれのない風評被害をはね飛ばすべく、福島や東北の魅力や生産者の現況を発信する“メディア”として開発された。
弁当は「メディア」、コメのバンズは「器」
「毎回、食べていたらさすがに飽きるでしょう」と思うかもしれない。もちろん心配はいらない。具材は東北の食材にこだわりながら、定期的に変更していく方針だ。例えば2014年5月17日からは、ニンジンに代わり、宮城県東松島市産の「皇室献上海苔のかき揚げ」、「皇室献上海苔の高菜カリカリ梅」が控えている。
商品をプロデュースしたのは47PLANNING代表取締役の鈴木賢治氏。氏の言葉を借りると、「弁当はメディア」。そして「コメのバンズは器」であり、融通無碍(ゆうずうむげ)なコメの器に東北各域の魅力的な食材を乗せ、「そのおいしさを発信していきたい」という思いから開発したのだという。
確かに使われているいずれの食材はいずれもあまり知られておらず、流通量も少ないかもしれない。ただ、良質でユニークなものばかりだ。例えば「短角牛」。こめてに使われる国産飼料のみで育てられた牛は、生産量が国内肉用牛の0.5%にも満たないことから「奇跡の牛」とも呼ばれている。
日本に固有の赤茶の毛の短角種は「赤べこ」の愛称でも知られる。生まれた子牛は母牛とともに山に放牧され、母乳と無農薬の牧草のみで、のんびりと育つ。冬の下山後も与えられるのは自家栽培のトウモロコシや国産の稲わらといった粗飼料のみ。穀物中心の濃厚飼料のみを与えて、脂身の多い“霜降り”にする飼育法(半面、牛は視力の維持に必要な成分が欠乏することから、盲目になることもある)と異なり、牧草中心で運動量の多い環境で育てられる牛は、グルタミン酸やイノシン酸といった肉本来の旨味成分が多い赤身肉になるのだという。実際、こめての具材は噛みしめるほどに肉本来の味を感じ、また脂身が少ないためか、冷めてなおおいしいのだ。
東松島の「ノリ」もそう。大曲浜のノリは、震災前の2010年まで幾度も各種コンクールで優勝し、6年連続で皇室献上用商品に選ばれてきた。その特徴は柔らかさ。養殖網の交換頻度を増やし、また一つの網から摘みとる頻度を減らすことで、ノリの細胞壁の硬化を防ぎ、口当たりのよさを維持しているのだという。浜では、津波によりほぼ全ての設備が失われ、過半の養殖家が仮設住まいとなったが、不屈の精神で設備を復旧。2014年に初摘みを実現した。こめてにはその貴重な一部が使われている。
羽田空港で売られている「こめて」は、47PLANNINGがレシピを提供し、空港食商品の開発や製造を担う日本エアポートデリカが製造・販売をしている。食材指定の商品は食材ごとに、受注や配送、加工、品質管理などに細かな調整が必要となるため、日本エアポートデリカ側にとってもこれまでにない負荷をともなう。ただ、買い手としては、見知った同士が信頼関係に基づいて届ける食材の安心感は確かな付加価値だ。
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