「今日の私、なんか違わない?」――世の男性が経験する恐怖の質問:女性脳と男性脳の論理(3/3 ページ)
ビジネススクールで論理思考を教える“男性脳”の筆者が、摩訶(まか)不思議な存在である女性と女性の脳を観察、分析する。今回は、おそらく多くの男性が経験する恐怖の質問。「今日の私、なんか違わない?」から。
女性はプロセスも見ていて、男性はアウトプットしか見ていない
話を元に戻そう。実は、先ほどの会話の続きに、重要なヒントが含まれている。それはこういう具合だ。
Kさん:さっき、Yさんが言っていたみたいに、男性はアウトプットしか見てない。女性は何かを見たときに、例えばマカロニサラダ1つとってみても、材料が何種類で、それを作るまでに何工程あってでき上がるまでに何分ぐらいかかるか、というプロセスを要素分解しているんですよ。
「Yさんが言っていたこと」とは、「デートのときのレストランの選び方で、相手がどの程度の男かが、だいたい分かるよね」という会話の中ででてきた発言で、ざっとこんな意味合いだった。
Yさん:その日の気分とか状況とか、私のキャラクターとか――。そういうのと、選んでくれたレストランが合っているかってこと。こういうレストランの選び方をするのなら他もこうだろうなとか、ああだろうなとか。究極的に、私との付き合い方もそうなんだろうな、って。アウトプットからインプットを見ているかも。
ここから、また仮説を考えてみよう(仮説は初回からの続き番号である)。
「男性はアウトプットしか見てない。アウトプットしか考えていない」、「女性は、アウトプットまでのプロセスにまで思いを馳せている」。つまり、
- 仮説8:男性は、結果で評価する
- 仮説9:女性は、プロセスも評価する
ということだ。
これが本当だとすると、その意味するところは、企業における評価にもつながっていく予感がする。ここで「髪型」の話に戻り、もう少し分解して考えてみよう。
今夜の晩ゴハンはプロセスを要素分解して褒めてみよう
まずは、女性が髪型を変えるまでのプロセスを仮説的に分解してみたい。
- STEP1:髪型を変えたくなる事象が発生する(例えば、気分を変えようとか、季節ごとの服装に合わせたい、など)
- STEP2:本当に髪型を変えるか考える
- STEP3:髪型を変えた後に発生する事象を想像する(素敵な人に声をかけられる、周りから「似合いますね」と褒められる、など)
- STEP4:いいイメージが浮かんだので、実際に変えることを決心する
- STEP5:髪型を変える
こんな具合だ。
ここで、髪型を変えた女性を見たときに、男性と女性はそれぞれどんなことを考えるのだろうか? 私の予想では以下のようになっている(カッコ内は、それぞれの心の声)。
男性:(髪型が変わった)→(髪型が変わったことが分からない無神経な男とは思われたくない)→(だから言葉にしておこう)→「髪型変えたのですね、素敵ですね」
女性:(なんとなく雰囲気が変わった)→(髪型が変わってる。あとネイルも変わってる。服装にも合ってるな)→(何があったのだろう)→(そういえば、最近、忙しかったみたいだもんな)→(仕事が一区切りついたのかな? それでデートかな? そういえばしばらく彼氏とも会えてなかったはずだしな)→「ねえねえ、何かいいことあるんじゃない?(と言って、一応デートの話という雰囲気で聴いてみよう)」
少し妄想が過ぎたかもしれないが、ここのポイントは、男性は目の前に見える事象を元にアクションを決める。一方、女性はそこに至るまでの過程にまで思いを馳せて、その上でアクションを決める、ということ。
ここで、今までの発言を整理してみよう。
- 髪の毛を切ってキレイにしたのに、そこは全然見てなくて「今日のネイルはきれいだね」って言ってみたりして。「そこじゃない!」って。(Iさん)
- それと、物を褒めるじゃないですか。(Fさん)
- お弁当を作っていって、「このプチトマトうまいね」って言われてキレたことがある。(Aさん)
- お父さんがお母さんに「君が作る料理で自分が1番好きなのはマカロニサラダ」って言うんですけど、お母さんは「そこじゃないんだよな……」って。(Iさん)
発言1.は、Iさんが「自分の全部をきちんと見てよ。できたら、どうしてそうしたのかもきちんと理解してよ(例えば、あなたにきれいと思われたいから、とか?)」と考えているからこの不満が出てくる。2.も、基本的には多分同じだ。「全部をきちんと見てよ。どうせ褒めるなら、どうしてこれを身につけているのかをきちんと理解してよ(例えば、仕事で頑張って“自分にご褒美”で買ったバッグだった、とか? ずっと傷んでいるのが気になっていたけれど、ようやく時間ができて買いにいけてよかったね、とか?)」と。
発言3.と4.は、まさにKさんの言ったとおりだ。「切って茹でてマヨネーズで和えるだけ、誰が作っても大体同じ味になるマカロニサラダの前に褒めるものがあるだろう。おまけに、洗って入れるだけのプチトマトを褒めるとは何事だ」と。
多分、そうだ。いや、そうに違いない。これには自信がある。なぜなら、今まで一度だって、妻に対する褒め言葉が有効に働いたことないからだ(ふふんっ!)。
よし。この仮説をもとにいろいろ考えてみよう。まずは今晩の晩ゴハンからだ。あっ、でも、お刺身だったらどうしよう……。
ちなみに、ここまでの原稿を読んだK女史からは、冷めた口調でこんな発言。「溜田さん、やっぱり分かってないですね。プロセスは考えるんじゃないんですよ。感じるんです。まだまだだなぁ……」
溜田信(ためだ・まこと)
東京大学工学部応用物理学科卒業後、日本アイ・ビー・エムに入社。銀行オンラインシステム担当のシステムズエンジニア&営業マネージャを経験。その後、外資系SIベンダー、マイクロソフトにおけるソリューションビジネスの経験を経て、戦略系コンサルティングファームA.T.カーニーに入社。メーカーの事業戦略・SIベンダーの営業戦略・組織改革、金融機関のIT戦略等、IT知識を持つ戦略コンサルティングプロジェクトに従事した経験を持つ。グロービスにおいては、マーケティングならびに思考系の講師を担当している。
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