「お召し列車」の運行告知は、日本の平和を知らせている:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
日本人にとって天皇陛下は特別な存在だ。それは日本の鉄道ファンにとっても同じ。天皇陛下がお出かけになるときには「お召し列車」を走らせてくれる。我が国で最も重要な人物の行程が世間に告知される。これこそ平和の証。世界に誇れる日本のよさである。
このよき習慣を続けていきたい
ところで、国会議事堂の天皇陛下の控えの間のとなりは、ずっと自民党の控え室である。自民党は野党に下っても、この部屋を他党に譲らなかった。天皇制に異を唱える政党が天皇陛下の隣室を使うことをよしとしない。これはおそらく国会運営の暗黙の了承事項と思われる。現在の象徴天皇制に賛成する考えが多数だろう。しかし、日本は思想の自由が認められている。天皇制に反対する人もいる。
そんな状況でも、天皇陛下の行幸啓は官報に記載され、お召し列車が走り、鉄道ファンは歓喜する。
「天皇陛下が鉄道を使っておでかけになる」「列車の旅を楽しまれる」。これは、ご利用になられた鉄道会社だけではなく、鉄道業界にとって誇らしいことだ。そして私たちは、こんな事象から日本国内の平和を確認できる。暗い悲しいニュースも多い中、お召し列車は平和のシンボルだ。「お召し列車が趣味の対象」となる社会を、私たちは不断の努力で維持していきたい。
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