2015年、「クーリングオフ」の制定でケータイビジネスが一変するかもしれない:キャッシュバックも月々割も消える?(1/5 ページ)
携帯電話や光回線といった、通信サービスの契約にクーリングオフが近々導入されることをご存じだろうか。携帯電話の店頭販売におけるトラブルから、消費者を守るためのものだが、実はケータイビジネスを一変させる可能性を秘めている。
著者プロフィール:山崎潤一郎(やまさき・じゅんいちろう)
音楽制作業に従事しインディレーベルを主宰する傍ら、IT系のライターもこなす。街歩き用iPhoneアプリ「東京今昔散歩」「スカイツリー今昔散歩」のプロデューサー。また、ヴィンテージ鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」の開発者でもある。近著に『コストをかけずにお客さまがドンドン集まる! LINE@でお店をPRする方法』(中経出版)がある。
携帯電話や光回線といった、通信サービスの契約にクーリングオフが導入されそうだ。2008年から総務省で始まった議論が、ここに来て大詰めを迎えている。総務省では2015年度の通常国会に電気通信事業法改正案を提出し、クーリングオフを法制化する方針を固めたという。
クーリングオフというのは、訪問販売やマルチ商法などの取引で契約を結んだ後、一定期間内であれば無条件で契約を解除できる法制度だ。特定商取引法(特商法)などで定められており、不意打ちやリスクが高い取引から消費者を保護する目的で制定された。
対象となる販売方法や期間は各法律で定められているが、中でも通信サービスに関連が深いのは、訪問販売と電話勧誘販売だろう。筆者もたびたび経験しているが、KDDIやNTTを名乗る相手(本当は通信事業者の代理店)から電話がかかってきて、少しばかり強引とも思える論理で、お得感を強調して乗り換えを勧めるというものだ。こちらがセールストークの矛盾点を指摘すると、逃げるように電話を切る失礼な業者もいる。しかし、お年寄りなど通信サービスに詳しくない人や、心優しい人の中には、そのまま契約してしまうケースもあるはずだ。
そういった訪問販売や、無防備な在宅時を狙った不意打ちのセールス電話によって結んでしまった契約を、後から内容を振り返って「必要ない」と思い直したときに、取引相手への説明などをせずに解約できるようになるのだ(今までできなかったことが信じられないところではあるが)。ユーザーとしては基本的には歓迎すべきだと思う。
クーリングオフ制度がケータイビジネス全体を変えてしまう?
しかし、通信サービスのクーリングオフは、消費者保護という枠を超え、携帯電話の買い方や契約方法を大きく変えてしまう可能性を秘めている。というのも、通信キャリアからみれば、現状のビジネス手法や業界構造を大きく転換させる、爆弾的な要素を含んでいるからだ。
もしかすると、現在、携帯事業者や販売事業者が実施している、次のような販売手法や戦略がなくなってしまう可能性がある。
- 新規契約やMNPのキャッシュバック
- 「端末の実質負担金ゼロ」(月々割、月々サポートなど)
- 回線と端末の抱き合わせ販売
一体なぜ、このようなことが起こりうるのか。その理由を説明する前に、まずは通信サービスにおけるクーリングオフ制度の歴史を振り返ってみよう。
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