健康食品の怪しいキャッチコピーは“誰得”なのか:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
健康食品の広告を見て「うさん臭い」と感じる人も多いのでは。この業界でなぜ怪しい広告がはびこるのかといえば、規制が厳しいから。こうした事態を受け、安倍政権は規制を緩和するはずだったのに、とんでもないところから矢が飛んできたのだ。
トクホは、国が発行する“スタンプ”
そういう「正直者がバカをみる」的な業界にようやくメスが入る(はずだった)。安倍政権が「第三の矢」として健康食品の規制緩和を行なうと宣言したのだ。米国で医療費削減などを目的に導入された「ダイエタリーサプリメント制度(PDF)」をベースにして、“グレーゾーン”の健康食品やサプリメントを法律的に定義し、「機能」をうたえるようにしようじゃないのというわけだ。
米国モデルは、エビデンス(科学的根拠)があれば、「血圧の健康に役立つ」とか「脳の健康を増進する」とうたえる代わりに嘘八百並べる業者への取り締まりを強化している。つまり、もう膝を回したり、CGで炎をつくったりする必要はない。口のうまさだけがウリの不真面目な企業は淘汰されて、マジメな企業が生き残る。一般消費者にとってもそんなに悪い話ではない。
なんて思っていたら、消費者庁が米国モデルを「第二トクホ」みたいな話にすり替えようとしている、という話が聞こえてきた。米国モデルが良いか悪いかはさておき、これはさすがにいただけない。「トクホ」(特定保健用食品)が今の「キャッチコピー商法」に拍車をかけた元凶だからだ。
1991年にできた「トクホ」は認証を取得すると、「脂肪が燃焼」や「トクホコーラ」みたいにキャッチコピーのバリエーションが増えるが、許可を得るまで平均4年。初期投資に数億円もかかる。要するに、大金を積めば入手できる国が発行する“スタンプ”だと思っていい。
では、カネのない中小零細はどうするか。“スタンプ”もない。機能もうたえない。となると、とにかく客をひきつけるキャッチコピーを生み出してイメージ商売をするしか残された道はない。中味よりもとにかくコピー。怪しげな健康食品やサプリメントを生み出す環境は、「トクホ」がつくっていると言っても過言ではない。
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