農業の衰退を食い止めるには――ベンチャー企業「マイファーム」の新ビジネス:INSIGHT NOW!(1/2 ページ)
農業従事者の減少に伴い、耕作放棄地が増えている――そんな問題を解決するため、貸し農園やビジネススクールなど、さまざまなアグリビジネスを展開するソーシャルベンチャー「マイファーム」を紹介しよう。
著者プロフィール:小槻博文(おつき・ひろふみ)
合同会社VentunicatioN代表。1973年東京都出身。1996年早稲田大学卒業。上場企業からベンチャー企業まで4社にて企業広報に従事した後、その経験を生かして「ソーシャルグッド」を世の中に広めるべく奮闘中。ベンチャー・中小企業やNPO・社会起業家などが広報・PR活動を行う上での仕組み・体制構築/担当者育成を支援する合同会社VentunicatioNを設立し、また「地域活性×広報・PR」をテーマに、徳島県の過疎地域の広報・PR活動にプロボノとして参画中。
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後継者問題や産業構造自体の問題など、さまざまな課題を抱える第一次産業。近年では産業人口が大きく減少し、農地も減少傾向にある。今回はそんな問題を解決するために、さまざまなアグリビジネスを展開し、“農業の活性化”を目指すソーシャルベンチャー「マイファーム」を紹介しよう。
マイファーム代表の西辻一真氏は、進学のために京都に出てきたが、生まれ故郷である福井県へ帰省するたび、車窓から見える景色から次第に農地が消えていくことに寂しさを感じていた。こうした農地の減少は福井県に限った話ではない。日本全体で農業従事者は減少傾向にあり、それに伴って耕作放棄地が増えていることを西辻氏は知り、次第に危機感を募らせていった。
そのような中、自分が幼少期から家庭菜園で野菜作りを学んでいたことから、耕作放棄地を一般生活者に“農業体験用”として利用してもらうことで、問題を解消できるのではないかと考え、2007年にマイファームを設立したという。現在は複数の事業を展開しているが、この「体験農園」は創業時から続いている。首都圏や近畿圏など、大都市近郊を中心に、現在約60カ所の農園を運営しており、初心者でも気軽に野菜作りを楽しめる。
農業経営やビジネスを教える“学校”を展開
マイファームは体験農園だけではなく、農業経営や農業ビジネスに関する知識やノウハウを教え、農業界を抜本的に変える人材を育成しようと、社会人向けの農業ビジネススクール「アグリイノベーション大学校」を開講した。2014年で5年目を迎えるが、最近は少しずつ卒業生の中から、実際に農業に就業したり起業したりする人も出始めているという。
さらに直近では「流通イノベーション事業」も開始した。従来の農家は、作物を特定の事業者のみに売るなど、販路が限定的だったため「ビジネス」という視点がなく、機会を損失しているケースも散見された。そこで、従来の流通では取り扱いが難しかった、規格外品や少量多品目の野菜などの販路開拓を同社が支援している。
その流通イノベーション事業の一環として、6月2日に京都に直営の小売店舗をプレオープンした。直売場と言えば“その土地で採れた野菜を販売する場所”というイメージが強いが、この店舗では全国各地の野菜を取り扱うことで、「こだわりの食材を購入したい飲食業や地元の生活者と、全国の農家とをつなげたい」(同社)という。
そのほか、直営農場を運営したりもするなど、人と農業とが関わる機会を創出したり、農業への距離を近づけたりすることを主旨に、さまざまな事業を展開している。
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