インスタントコーヒーの味は、なぜ“飽きる”のか:仕事をしたら“味”を分析できるようになった(2/5 ページ)
コーヒーを初めて飲んだとき、ほとんどの人は「ニガイ」と感じるのに、飲んでいくうちに「おいしい」と感じる。なぜか? 飲食と人間の飽きの関係性について、AISSYの鈴木隆一社長にうかがった。
日本人の味覚は大きく変わった
鈴木: ある文献によると「焦げ臭くて味わうに堪えず」と記されているんですよね。奇妙な味だったので、警戒本能が働いたのではないでしょうか。
最初に飲んだ人から「焦げ臭い」と評されたコーヒーですが、やがて日本でも洋風の食生活の憧れから、特に戦後飲まれるようになりました。200年前の役人が全くおいしいと感じなかったコーヒーが、今は「おいしい」と感じている人が多いということは、「日本人の味覚が大きく変わった」と言えるでしょう。
土肥: 日本人の味覚が大きく変わったということですが、コーヒーの好みも変化してきているのではないでしょうか。例えば、30年ほど前、自販機でコーヒーを買おうと思っても、甘いタイプのモノしかありませんでした。駅の売店でも、サラリーマンが腰に手を当てて、ビンに入ったコーヒー牛乳を飲んでいる姿をよく目にしました。しかし、今はそうした光景を見ることはほとんどありません。
では、どんなコーヒーを飲んでいるのか? 自販機では、甘いコーヒーがどんどん減っていき、今では微糖やブラックが主流になりました。また、外でコーヒーを飲む場合、昔は喫茶店くらいしかありませんでしたが、今ではコーヒーチェーン、コンビニ、ファストフード、ファミレスなど、いろんなところで飲めるようになりました。前回、味覚センサーで分析していただいたとおり、味もさまざま。ということは、ここ数十年、いや、数年を振り返ってみても、日本人のコーヒーの好みも変化したと言えるのでしょうか?
鈴木: 変化していますね。ご指摘のとおり、コーヒーをそのまま……つまり、ブラックで飲む人が増えてきたのではないでしょうか。では、なぜ味覚は変化するのか。コーヒーというのはカフェインの効果もあって、飲むと落ちつくことができる。もともと人間はコーヒーの苦味や酸味が好きではないのに、何度も何度も飲むことで学習するんですよね。そして、ある日、「おいしいなあ」と感じることができるんですよ。
関連記事
- コンビニコーヒーの味に違いはあるの? 科学的に分析した
外出先で「ちょっとコーヒーを」と思って、カフェチェーンに立ち寄る人も多いのでは。ファストフードやコンビニでも気軽にコーヒーを飲むことができるようになったが、その味に違いはあるのか。味を分析できる機械を使って調べたところ、意外な事実が……。 - ローソンのコーヒーは誰が飲んでいる? データから見えてきたコト
「コーヒーはコンビニで買う」という人が増えてきているが、一体どんな人が購入しているのだろうか。ローソンのPontaカードを分析すれば「どういった人が何を買ったのか」が分かるので、担当者に直撃。男性20〜40代がよく飲んでいるのは……。 - なぜコンビニは人気のない「エッグタルト」を売り続けるのか
ローソンでスイーツの販売データを見せてもらった。それによると「エッグタルト」はあまり売れていないのに、店頭に並び続けている。人気のない商品は消えていくはずなのに、なぜ「エッグタルト」を売り続けるのか。 - 自販機の一等地は「左上」? 人の視線を追いかけたら“常識”が覆った
自販機で缶コーヒーを買う――。日常的な行動なので、意識していない人が多いと思うが、実は自販機には隠れたノウハウがある。マシンの前に立ったとき「人は『左上』に注目する」と言われてきたが、ダイドードリンコがアイトラッキングを使って分析したところ……。 - ミドリムシが世界を救う? そんな時代がやって来るかもしれない
「ミドリムシ」と聞いて、どんなことを想像するだろうか。「青虫」「ミトコンドリア」などを思い浮かべる人も多いのでは。ミドリムシを増やして、地球そして人類を救おうとしている会社がある。その名は「ユーグレナ」。社長の出雲充氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.