時の記念日に寄せて──「時刻」と「時間」、きちんと使い分けていますか?:杉山淳一の時事日想(2/4 ページ)
"時刻"と言うべきところを"時間"と表記する事例が横行している。「メールを作成した時間は10分です」は正しいけれど「メールを送った時間は10時10分です」は間違い……のはず。時刻表ファンにとって、これが気になって仕方ない。
「時刻表」も、かつては「時間表」だった
「時刻」は時の流れの1点を指す。「時間」は時刻と時刻の間を指す。だから「メールを作成した時間は10分です」は正しい。「メールを送信した時間は10時10分です」は間違いだ。正しくは「メールを送信した時刻は10時10分です」だ。
銀行の例を引き合いに出したけど、世の中で「時刻」と「時間」という言葉が正しく使い分けられていない。どうでもいいことかもしれないし、どっちでも生活に支障はなさそうだ。でも「時間」と「時刻」はきっちり使い分けたい。そこにこだわってしまう理由は、私が「時刻表好き」だからだろうか。
駅に行くと、列車の発車時刻が掲示されている。時刻が並んだ表だから「時刻表」である。書店の雑誌コーナーで売られている冊子も「時刻表」だ。鉄道は「時刻」と「時間」をしっかり使い分ける。些細なところでも、用法を間違うと事故のもとだからである。列車は定められた時刻に駅を発着する。つまり「発車時刻」は列車が動き出す時点を指す。「発車時間」と言う場合、それは列車が発車する時間帯を示す。始発から終電までの半日以上の「時間」である。
ところが、鉄道の時刻表もかつては「時間表」と表記されていた。国会図書館の近代デジタルライブラリーを参照すると、日本で最初の鉄道が開業したとき、工部省の資料は「時刻表」と表記されていた(関連リンク参照:近代デジタルライブラリー:法令全書.明治5年)。ところが、冊子型時刻表の元祖は「時間表」であった。日本旅行文化協会の「汽車時間表附汽船自動車発着表」である。大正14年(1925年)4月号で、JTB時刻表の創刊号とされている。
「時間表」の歴史は意外と長く、昭和17年(1942年)まで約17年間も続いた。「時間」と「時刻」については、昔もあいまいだったようだ。
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