時の記念日に寄せて──「時刻」と「時間」、きちんと使い分けていますか?:杉山淳一の時事日想(3/4 ページ)
"時刻"と言うべきところを"時間"と表記する事例が横行している。「メールを作成した時間は10分です」は正しいけれど「メールを送った時間は10時10分です」は間違い……のはず。時刻表ファンにとって、これが気になって仕方ない。
「時刻表」と「24時間制」は同時に採用された
JTB時刻表1000号記念サイト(関連リンク参照:JTB時刻表1000号ありがとうキャンペーン-1000号のあゆみによると、17年間も続いた「時間表」は、昭和17年11月号から「時刻表」となった。同時に「24時間制」も採用された。従来の「発車時間は午後07:15」が、「発車時刻は19:15」となった。24時間制の採用は、時刻表を監修する国有鉄道が24時間制に移行したためだ。「時間」から「時刻」への変更は、24時間制の採用と関連しているようだ。
昭和17年といえば第二次世界大戦中である。同年6月のミッドウェー海戦で日本軍は大敗した。戦況が不利に傾く時代背景として、生活のあらゆる部分が厳格になりつつあったかもしれない。たとえば午前12時、午後12時といった場合、どちらが昼でどちらが夜中かと勘違いする場合がある。欧米の表記だと、11:00pmは深夜だ。私の世代だと、子供が見てはいけないテレビ番組に「11PM(イレブンピーエム)」があったからよく分かる。しかし、12:00pmはその1時間後ではなく、正午だ。こうした誤解を防ぐため、24時間制はとても分かりやすい。
国有鉄道の24時間制の採用は、軍部から厳格な運行管理を求められた影響ではないかと予想する。同時に曖昧な「時間」という呼称を「時刻」と明確にしたと考えられる。こうした経緯があって、日本の鉄道は24時間制で「時刻」を重く捉えている。真夜中の0:00についても、時刻表では発車時刻として0:00を使い、到着する場合は24:00となる。かなり厳格だ。
ちなみに日本で市販されている時刻表は、ほぼすべて「時刻表」だ。ただし、九州旅行案内社だけは「九州の綜合時間表」を発行している。同社によると、1947年の創刊当時は「時間表」と呼ぶ習慣が残っていて、この名前に違和感がなかった。それから変更せずに現在に至っているのだそうだ。創刊以来67年の伝統を守っているわけだ。
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