どんなにECサイトの技術が発達しても、結局最後は……:半径300メートルのIT
ECサイトでバッグを購入した筆者。ビッグデータやグロースハック、データサイエンスなど横文字が多いこの業界の解析術を身をもって体験しました。
著者紹介:宮田健(みやた・たけし)
元@ITの編集者としてセキュリティ分野を担当。現在はフリーライターとして、ITやエンターテインメント情報を追いかけている。アイティメディアのONETOPIでは「ディズニー」や「博物館/美術館」などのキュレーターをこなしつつ、自分の生活を変える新しいデジタルガジェットを求め日々試行錯誤中。
愛用していたバックパックがボロボロになり、新しいものに買い換えました。ノートPCが無理なく入る軽くてスリムなもので、とても気に入っています。今回は新しいバックパックを手に入れるまでに起きた、ある面白い事件を紹介しましょう。
「カートにまだ商品が残ってるよ?」
最近、ECサイトのアクセス解析はかなり進んでおり、どの広告バナーからやってきて何を買っていったのか、月に何度サイトにやってきて何を見ているのかなどを、ユーザー単位でチェックしている……とは聞いていました。しかし、そのようなデータ解析の事例を聞いても「細かいことをやってるんだなあ」という程度の認識しかなかったのが本音です。自分が実際に客の立場になるまでは。
知人がFacebookで「次はこのバックパックを買おうかな」と、とある商品を紹介していました。私も釣られてクリックし、その場でカートの中に放り込みます。米国での直販でしか取り扱いがないため、送料が30ドル近くかかります。そのため購入ボタンを押す直前でためらってしまいました。
翌朝、その直販サイトからのメールが届きます。そこには何と「商品がカートに入れたままになっていますが、今なら20%オフのクーポンを付けます」というシンプルな文言が。
これには驚きました。おそらく店舗側でさまざまな条件を設定し、これまでの経験から「値引きをしたら購入してくれる」という層にぴったり当てはまったのでしょう。翌朝というタイミング、値引き額(これはまさに自分が懸念していた送料とほぼ同額)ともに完全に私の心をつかんでしまい、すぐに購入ボタンを押しにサイトに戻りました。
ビッグデータやグロースハック、データサイエンスなど横文字が多いこの業界の解析術ですが、実際に客側の立場で考え、客側の気持ちを読めるものこそが、成功するのだろうと感じました。
しかし……ひどいオチが待っていた
ところが、今使っているバックパックは、残念ながらそのECサイトから購入したものではなく、渋谷のアップルストアで購入したもの。というのも、注文してから楽しみに待っていたのに、一向に届く気配がないためです。
発注後1カ月ほど経ちましたが、ステータスは相変わらず「処理中」。問い合わせメールを送ったところ「通常『処理中』のステータスは数十分で変わるはずなんだけど、システムに不具合があって……」という謝罪が帰ってきます(つまり、こちらがメールを送るまで気が付いていなかった!)。ということで、その時点でキャンセルしました。
ビッグデータやグロースハック、データサイエンスなど横文字が多いこの業界の解析術ですが、根本的な部分がなっていないと全く意味がないですよね。素晴らしい製品、それを売る仕組み、売るための仕掛けのバランスが重要であることを身にしみて体験した事例でした。
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