東大の教授が、「医療詐欺」なる本で医療界を告発した理由:窪田順生の時事日想(2/4 ページ)
救急車のたらい回し、医師不足問題、製薬会社の不祥事――。こうした問題は、国家による「医療」コントロールが限界にきているからなのか。医療界の現実について、東大医科学研究所の教授が赤裸々に綴った本が出た。
供給者側の論理
この話を聞いて、「ああ、この国の医療ユーザーには骨の髄まで“供給者側の論理”が刷り込まれているんだなあ」ということをつくづく感じた。
以前、このコラムでも触れたが、「降圧剤」なんかも分かりやすい(関連記事)。降圧剤の添付文書には、脳梗塞のリスクが高いので、高齢者には「慎重投与」と明記されている。しかし、70歳以上の約半数が服用している(厚労省「国民健康・栄養調査報告」)。「大胆投与」に書き換えたほうがいいくらい気前のいい飲ませっぷりだ。
ちょっと考えれば、薬を出せば保険点数が稼げる医師と製薬会社から「供給者側の論理」を押し付けられていることが明白だが、そういうサディスティックな仕打ちも患者側は手を合わせてありがたがる。
そんな歪(ひず)んだ医療の現実について、分かりやすく解説されているのが、東京大学医科学研究所特任教授である上昌広さんの新刊『医療詐欺 「先端医療」と「新薬」は、まず疑うのが正しい』(講談社)である。
ずいぶんショッキングなタイトルだと思うだろうが、これはなにも先端医療を掲げる医師や、新薬を売り出す製薬会社があくどいとか批判をする本ではない。救急車のたらい回し、医師不足問題、ドラックラグ(新薬承認の遅延)、製薬会社の不祥事など一見するとバラバラの問題のように見えるが、すべてたどっていくと日本の医療が抱える構造的問題につきあたることを指摘しているのだ。
その代表が、「中医協」(中央社会医療協議会)である。
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