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東大の教授が、「医療詐欺」なる本で医療界を告発した理由:窪田順生の時事日想(4/4 ページ)
救急車のたらい回し、医師不足問題、製薬会社の不祥事――。こうした問題は、国家による「医療」コントロールが限界にきているからなのか。医療界の現実について、東大医科学研究所の教授が赤裸々に綴った本が出た。
「医療」は誰のためにあるのか?
混合診療とは、公的医療保険とまかなう治療と、専門性が高い自由診療を組み合わせるというもの。上氏によれば、混合診療が導入されると、医師間の競争が促進されるので、患者側が享受できるメリットも多いという。
それを示すのが、「不妊治療」だ。これは保険が適用されない自由診療ではあるが、医師らの競争によっては今や日本の不妊治療技術は世界トップレベルに成長しているという。
ただ、「供給者」代表である日本医師会はこの「混合診療」に猛烈に反対している。「安全性や有効性の疑わしい治療が横行する」といかにも患者目線を装っているが、上氏のいう「競走」を拒んでいるかのようにも見えないか。そういえば、東北に医学部を新設するという話がもちあがった時、東北の人々が復興にもなるし、医師偏在解消になるからつくってくれと声をあげた時も、医師会は「医師が余るからとんでもない」と反対していた。
「医療」というものは誰のためにあるのか。なぜ上氏は、東大医科学研究所という医学界の中心部から、厚労省や多くの医師を敵にまわしながらも「詐欺」というショッキングな言葉を用いてまで問題提議をしたのか。
それらの疑問はすべてこの本のなかにある。「お医者さんの言うことは絶対だ」なんて思い込んでいる人にこそ読んでいただきたい。
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