オーストラリアに住んで気付いた「スターバックスが撤退した理由」(1/2 ページ)
スターバックスがオーストラリアから撤退したという報道がありました。独自のコーヒー文化を持つオーストラリアで、スターバックスが根付かなかったのはなぜか? 在住経験から、スターバックスが撤退した理由を考えてみました。
6月に、スターバックスがオーストラリアから撤退したことが報道されました。
スタバ、豪から「撤退」 地場コーヒー文化に敗北
(日本経済新聞 2014年6月19日)
スターバックスは、私がオーストラリアで生活していたときには、よくお世話になりました。知らないお店が連なる中、日本でも馴染みがあり、世界中で親しまれているという安心感から、来たばかりのころは何度も足を運びました。
しかし、このニュースを日本で知ったとき、驚く気持ちがある一方、ふに落ちる部分もありました。それは、「スターバックスに行かなくとも事足りてしまう」ということを、身をもって感じたからです。個人的な見解になりますが、スターバックスがオーストラリアから撤退した理由を、考えてみます。
撤退理由1. 独自のコーヒー文化とスタバのブランディングとの、ちょっとしたミスマッチ
オーストラリアの人たちは、朝の仕事前に1杯、昼はランチの後に1杯、夕方のコーヒーブレイクで1杯――と、1日に3回、もしくはそれ以上飲むくらいコーヒー好きが多いです。日本のように、缶コーヒーではなく、ちゃんとエスプレッソマシーンで豆がひかれているものを飲みます。基本的に、バリスタの資格を持っていないとコーヒーを提供することができないため、どの店でもおいしいコーヒーが飲めます。また、コミュニケーションの1つとして利用する人も多く、独自のコーヒー文化を形成してきたように思います。
こういうオーストラリアの文化に対し、スターバックスは「味」やこれまで形成されてきたコーヒー文化にかわる「演出」などの部分で突出することができず、浸透するに至らなかったのではないかと思います。しかし、場所がら人口が集中するエリアに点在していたので、スターバックスの店舗が閑散としていると感じたことはありませんでした。
撤退理由2. スターバックスより低価格のコーヒーがどれもおいしい
スターバックスのコーヒーは決して安い方ではないので、4ドルのコーヒーを毎回飲んでいると、かなりの出費になってしまいます。そのため、2〜3ドルで飲めるコーヒーを見つけ、そこで済ませる人も少なくありません。
また、ある地元のコーヒーチェーン店ではポイントカードを発行していたり、サービスでマフィンを付けてくれるカフェもあり、私も徐々にそちらへシフトしていくようになりました。こういうのも、お客さんがスターバックスから低価格のコーヒー店や、その他のお気に入りのカフェに流れてしまった理由の1つではないかと思います。
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