それでも“一歩も引かない”プーチンが抱えるリスク:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
ロシアの格安航空会社、ドブロリョートがEUの制裁によって運行停止に追い込まれた。プーチン大統領はそれでも、欧米への態度を軟化させる兆しを見せない。彼は一体どのような幕引きを考えているのだろうか。
エネルギー輸出が封じられ、“ジリ貧”になる可能性
現在、プーチン大統領の支持率は80%にも達している。これだけの支持率は2001年9月11日、米国同時多発テロ発生当時のブッシュ大統領並みだ。
ブッシュ大統領はその支持率の高さを受けて、アフガニスタンに進攻し、イラクとの戦争にも踏み切った。その結果、アフガニスタンではタリバン政権を打倒し、イラクではフセイン政権を打倒した。しかし、アフガニスタンもイラクも政情は不安定化し、多くのテロが「輸出」された。その上、国力を“浪費”した米国は、いま世界的な影響力を失いつつある。
プーチン大統領が、国内の支持率を背景にあくまでも親ロシア派武装組織による“内乱”を支援するなら、その代償は小さくない。今回の制裁の中には、ロシアへの技術移転も制限されている。その影響はすぐに出るわけではないが、極地でのエネルギー開発を進めたいロシアにとっては、西側の先進技術はぜひとも欲しいところなのだ。
さらにエネルギー輸出に頼るロシア経済にとって、欧州へのエネルギー輸出が停滞する影響も大きい。停滞だけではない。米国のシェール革命によってエネルギー地図が塗り変わっている以上、エネルギーを人質にして欧州に圧力をかけることが難しくなってきている。ロシアの東側で日本にエネルギーを売りたいと言っても、米国や欧州の制裁措置に反してまで、日本がエネルギー輸入を進めるのは難しい。中国だけにエネルギーを売る形になれば、価格交渉は難しくなる。
ロシアは資源輸出依存からの脱却を目指し、日米欧などの企業による直接投資を促進してきた。しかし、そうした資金流入はとん挫しかかっており、ロシアの経済転換はますます遅れることになるだろう。それは、最終的にはプーチン長期政権のリスクになる。
西側先進国がロシアとの首脳会合を持つようになって20年以上が過ぎた。しかし今年、ロシアのソチで開かれる予定だったG8の首脳会合は中止となり、事実上、ロシアは“先進国クラブ”から締め出された。
イデオロギーの対立による冷戦の終結は新たな枠組みをもたらした。しかしその枠組みが壊れた今、この国際情勢を「新冷戦時代」と呼ぶ向きもある。ロシア対西欧――この対立がどうなるのかは、プーチン大統領の次の一手にかかっているのは間違いないが、軟化の兆しはまだ見えない。
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