“匿名”データからでも、個人が特定されてしまう理由:「日常」の裏に潜むビッグデータ(3)(3/3 ページ)
ビジネスに生かせるビッグデータとして、個人の行動や状態に関する情報、いわゆる「パーソナルデータ」に注目が集まっている。適切に使えば大きなメリットを生む半面、複数のデータを組み合わせれば、名前を伏せていても、個人が特定されるリスクもあるという。
問われる企業の倫理観、法整備も急務
Googleはパーソナルデータの利用に積極的であることをはっきりとユーザーに示している。Gmailで送受信している内容をすべて自動的にスキャンしていることを2014年4月に認め、その分析結果を広告配信などに利用することを利用規約に追加したのだ。
これによって、日本でも発売間近と言われるメガネ型ウェアラブル端末「Google Glass」についても、ユーザーの利用データ(Google Glassを通して見た光景など)がGmailと同様にスキャンされ、利用される可能性が出てきた。
あらゆる環境からインターネットへ接続できるという「ユビキタスコンピューティング」を提唱した東京大学の坂村健教授は、自動改札やGPSなど、ネットワークを利用した便利な技術が普及する中で、“センシティブデータ”と呼ばれる、個人を特定できるような(特定性が高い)データの扱いは、慎重に考える必要があると指摘している。
「『東京都内在住の35歳の男性』では誰を指すか判らないが、『体重150キロ以上』という項目が加われば特定できる可能性が出てくる。つまり、氏名を隠すくらいではプライバシーは守れず、データを組み合わせたときのリスクにも注意しなければならない」(坂村氏)
いずれにしても、パーソナルデータはビッグデータの要であることは間違いなく、これからもいろいろな方法で収集され、利用されるだろう。今後、企業や自治体がデータをどう集め、どう使おうとしているのか、そのメリットもデメリットも享受するであろう個人が状況を知り、きちんと注視していく必要がありそうだ。
問われるべきはデータを利用する企業側の倫理観だが、現実には法整備が進んでいないことから、どこで線引きをすればいいか、企業側も判断できない状況にある。例えば、一言で「匿名性の確保」と言っても、匿名の定義が決まっていない。個人が特定できない(特定性が低い)というのは何を指すのか、という基準も議論の真っ最中である。
現在、日本では個人情報保護法が改正される方向に向かっており、2015年の通常国会での法案提出を目指すと言われている。そこで、次回はパーソナルデータやビッグデータを取り巻く法整備が、国内外でどのように進んでいるのか。その現状を見ていく。
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