あれほど騒がれた「お台場カジノ」の話がぷっつりと消えた理由:窪田順生の時事日想(2/3 ページ)
石原さんや猪瀬さんが都知事だったころは「お台場カジノ」構想に前向きだったのに、なぜか舛添さんが都知事になってからは慎重な動きに。その背景には、何があるのか。
「お台場カジノ」はお蔵入り
初出馬からカジノを掲げていた石原さんやら、その路線を踏襲して「カジノは大人のディズニーランドだ」と熱弁をふるった猪瀬さんと比べたら舛添さんはかなりノリが悪い。カジノですべてがよくなるとは思わない、なんて感じでわりとシラーッとしているのだ。だから、「お台場カジノ」はちょっと実現が難しいんじゃないのというのだ。
確かに、「お台場カジノ」は石原元都知事と、石原さんと近しい企業がかれこれ20年近く進めてきたいわば“石原案件”でもある。その意志を引き継ぐ義理は舛添さんにはない。前の選挙戦では田母神さんの応援にまわった石原さんから「舛添じゃあ東京は守れない」なんて散々コキおろされていたし。
そんなカジノ慎重派の舛添さんを、さらに慎重にさせているのが、カジノ反対派が推し進める「カジノができるとギャンブル依存症が増えますよ」というネガキャンである。社民、共産、クレサラ系弁護士というおなじみのメンツながら、国会議員、都議、霞ヶ関にジワジワとボディブローのように効いてきているのだ。事実、先ほどの怪文書にも「多くのカジノ依存症都民の犠牲に上に成り立つ」とあった。
なんて思っていた矢先、厚生労働省研究班がこのネガキャンに加わった。日本でギャンブル依存症の疑いがある人は536万人もいる。だから、カジノをつくってもいいけど、日本人を入場させるべきではないとか言い出したのだ。
この研究班は、安倍首相が食品の機能性表示制度を解禁しますと言った途端、健康食品はインチキが多いですというデータを公表するなど政治的なバイアスがもろにかかっていることで知られている。その一方で、「受動喫煙で年間6800人が死んでいる」なんてどこをどうやったらそんな因果関係が証明できるんだ、というダイナミックなデータを出すことでも有名だ。
だから、この数字に関してもかなりうさん臭いなとは思っている。そもそも、4000人を国際基準にのっとって面接調査したというが、この「国際基準」というのがなんともいかがわしい。
この手の調査というのは米国やら精神分析の手法をもとにした質問表なのだが、日本と欧米諸国ではギャンブルにまつわる環境がまったく違う。
想像してほしい。カジノくらいしかギャンブルがない国と、全国に1万2000軒のパチンコ、パチスロ店があって自治体による公営ギャンブルも充実している国で、「ギャンブル止められませんか?」という質問の意味はまったく変わってくる。
要するに、「ポーカーゲームにのめりこむあまり一家離散しました」という人と、「休みになるとついパチンコにいっちゃうんスよね」という人を「国際基準」という網ですべてギャンブル依存症にしていいのかという問題だ。
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