なぜ、“うどん県”からチェーン店が出てこないのか:仕事をしたら“うどん”のことが見えてきた(前編)(4/7 ページ)
「丸亀製麺」「はなまるうどん」「つるまる」――。讃岐うどんを扱っているチェーン店を調べてみると、ある共通点があった。それは、どれも本社がうどんの本場・香川県でないこと。その理由について、香川大学大学院の高木知巳准教授に聞いた。
高木: その通りですね。そのころ、第三次讃岐うどんブームが起きるのですが、この背景には地元タウン誌の存在がありました。1989年にタウン情報誌『タウン情報かがわ』で、「ゲリラうどん通ごっこ」という連載が始まりました。県内の怪しいうどん店を紹介して、それが口コミで広がったんですよ。
その記事を読んだ人は「えっ、こんなうどん店があるの!?」といった感じで珍しい店が紹介されていました。田んぼの真ん中にあったり、山奥にあったり、ちょっと変わった店だけど、おいしい――そんな情報が多かったですね。
土肥: 地元の人も知らなかったお店ですね。それは話題になりそう。
高木: その連載は『恐るべき さぬきうどん』という本になって、1993年に出版されます。そんな本、香川県以外で売れるワケがないということで、最初は県内でしか販売していませんでした。ところが、「怪しいうどん店めぐり」がメディアで取り上げられるようになって、1995年には全国の書店で販売されることになったのです。
そして第四次ブームがやってきたのは、セルフ式のチェーン店が全国で広がり始めた2002年ですね。その先陣を切ったのが「はなまる」。当時社長だった前田英仁さんは、それまで衣料卸会社を経営されていたのですが、第三次ブームを見て「これはビジネスチャンスだ」と判断しました。
しかし、当時のうどんは「おじさんの食べ物」だったんですよ。ほとんどの店は大衆食堂風で、男性客ばかり。そこで前田さんはファストフード風にして、女性や家族連れにも入りやすい店にしました。「POPでカジュアル」「明るく清潔」という店のコンセプトで、高松市に第一号店がオープンしました。
土肥: はなまるは2002年に、渋谷店をオープンしました。このときは話題になって、1杯のうどんを求めて行列ができていましたよね。当時、ワタクシは大阪で働いていたのですが、その報道を見たとき「えっ、東京の人って“100円のかけうどん”を食べるのに、あんなに並ぶのかあ」と、ちょっとびっくりしました。
当時の大阪でもセルフ式のうどんが話題になっていましたが、東京ほど行列はできていなかったんですよ。大阪ではすでに安い立ち食いうどん店があったので、それほど目新しく感じなかったのかもしれません。
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