なぜ、“うどん県”からチェーン店が出てこないのか:仕事をしたら“うどん”のことが見えてきた(前編)(3/7 ページ)
「丸亀製麺」「はなまるうどん」「つるまる」――。讃岐うどんを扱っているチェーン店を調べてみると、ある共通点があった。それは、どれも本社がうどんの本場・香川県でないこと。その理由について、香川大学大学院の高木知巳准教授に聞いた。
讃岐うどんブーム
土肥: いわゆる“讃岐うどんブーム”っていつごろ起きたのでしょうか?
高木: 1960年代まで、香川県でうどんは外食するものではありませんでした。近所の製麺所や食料品店で食べることもできたのですが、多くの人はうどん玉を買って来て、自宅で食べていました。どうしてもそこで食べたい人だけが、醤油だけを借りて、お店の片隅で食べていたんですよ。お店側も「そこで食べたい人はどうぞ」といった感じなので、いまの外食とはかなり違っていました。
そして、1969年に「第一次讃岐うどんブーム」がやってきました。高度経済成長期で、国民の所得が上がり、外食をしたり、国内旅行をする人が増えました。そうした中、「県外客や社用族を案内しても恥ずかしくない店をつくれば、たくさんのお客さんに来てもらえるかもしれない」ということで、セルフ式ではなく、フルサービスのお店が増えました。
土肥: フルサービス店というのは、自分で天ぷらなどをトッピングするのではなく、メニューに「天ぷら うどん」と書いているお店のことですよね。社用族を案内……ということなので、価格も少し高めに設定されていたのでしょうか?
高木: はい。フルサービスのお店は家族連れにも受け入れられ、かなり増えました。家族で外食することは、中流階級の象徴であり、ハレ(非日常)であったのです。
そして、瀬戸大橋が開通した1988年、第二次のブームに。それまで、香川県への観光客数は年間400〜500万人ほどだったのですが、1988年には1000万人を超えました。観光地、レストラン、土産物屋などに人が溢れかえって、もうウハウハ状態。
その一方で、サービスレベルが低下して、観光客の間で評判が悪くなりました。翌年、観光客は2割以上減少して、その次の年には800万人を割り込みました。そうした状態から脱したのは、2009年に“高速道路1000円”が導入されてからです。観光客が増え、2012年には893万人に回復しました。
土肥: “高速道路1000円”が導入されたときには、関西方面からの日帰り客が増えたのではないでしょうか? 休日には、よく瀬戸大橋が渋滞になっていましたので。
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