なぜ、“うどん県”からチェーン店が出てこないのか:仕事をしたら“うどん”のことが見えてきた(前編)(6/7 ページ)
「丸亀製麺」「はなまるうどん」「つるまる」――。讃岐うどんを扱っているチェーン店を調べてみると、ある共通点があった。それは、どれも本社がうどんの本場・香川県でないこと。その理由について、香川大学大学院の高木知巳准教授に聞いた。
香川県の市場は特殊
土肥: ここまで香川県でうどんが作られてきた背景、うどんブームの歴史、丸亀製麺とはなまるの違いなどをうかがってきました。ここで高木さんにうかがいたい。なぜ、うどんの本場・香川県から全国チェーンを展開する店は生まれていないのでしょうか?
高木: 香川県は、うどんの市場として特殊なんですよ。本場であるがゆえに、非常に特殊な市場になっています。現在、県内にうどん店は700店ほどあって、県民は頻繁にうどんを食べている。食文化としてうどんが根付いているので、その人たちに受け入れられるためにはレベルの高いモノでないといけません。しかも、競争が激しいので安い。なので、全国チェーンを展開している店が県内で展開するのは難しいんですよね。
ドイさんは香川に行かれたとき、うどんを食べられたそうですが、そのときはチェーン店に行かれましたか?
土肥: チェーン店のうどんは、香川県以外でも食べることができるので、個人で経営されているお店に行きました。
高木: 県外の人は「せっかく香川県に来たのだから、そこでしか食べられないうどんを食べよう」と思いますよね。県内の人も近くにおいしい店があるので、そこで食べるんですよ。県内にはたくさんのライバルがいるので、店は個性を出していかなければいけません。はなまるは高松市でスタートしましたが、13店舗にとどまっています。丸亀製麺にいたっては4店舗しかありません。
土肥: 店を出さなかったのではなくて、出せなかった?
高木: ですね。全国展開している会社は「香川県内で展開するよりも、県外で展開したほうが簡単」と思っているのではないでしょうか。県外の人は頻繁にうどんを食べる習慣がないので、会社はそうした人たちをターゲットにして、「必要にして十分」な品質のうどんを効率的に提供するシステムをつくったんですよね。
「全国展開して会社を大きくしよう」と思っているチェーン店の経営者と、「自分のうどんをつくっていこう」と思っている職人とでは、考え方にかなり違いがあるんですよ。
こうしたケースは、他にもあります。例えば、長崎ちゃんぽんを出している店はたくさんありますが、全国展開で成功しているのはリンガーハットだけ。そのリンガーハットは長崎県で創業されていますが、現在の本社は東京。創業者は鳥取県の出身で、前職はとんかつ店。表現は悪いですが、“よそ者”が長崎ちゃんぽんで成功したわけです。
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