京急電鉄のカジノ構想で注目、「統合型リゾート(IR)」が“うさんくさい”ワケ:杉山淳一の時事日想(4/6 ページ)
京急が統合型リゾート(IR)を運営する「カジノ構想」を発表した。リゾートというと聞こえはいいけれど、その裏が分かるといきなりうさんくさい言葉になる。27年前の「リゾート法」の悪夢を忘れちゃいけない。なぜわざわざ「IR」と略すのか、なぜ「カジノ」とはっきり言わないのか。
リゾート法の悪夢
「リゾートがヤバい」理由は、1987年に制定された総合保養地域整備法、いわゆるリゾート法(関連リンク参照)だ。国民の余暇活動を支えるため、官民一体となって遊び場を作ろうという法案である。空前の好景気の中で、当時のほとんどの国民はカネとヒマの上手な使い方を知らなかった。旅行はすれども観光が主体で、国内ではせいぜい3泊程度。そこで、欧米のリゾート地に見習い、1週間から10日、それ以上を過ごせる「滞在型リゾート施設」の普及を目指した。それを念頭に置いた法案だった。
そこまでは問題ない。しかし、この法案の最大の問題点は第15条だ。
第十五条
国は、同意基本構想の実施を促進するため、国有林野の活用について適切な配慮をするものとする
2 港湾管理者(港湾法 (昭和二十五年法律第二百十八号)第五十六条第一項 に規定する都道府県知事を含む。)は、重点整備地区に係る港湾において同意基本構想に定める特定施設の設置の促進が図られるよう当該港湾に係る水域の利用について適切な配慮をするものとする。
つまり、国有林や河川、海岸について「国や都道府県知事の許可を得れば開発していいよ」という法律だった。林野庁によると、国有林は「その多くは奥地の急峻な山地や水源地にあって、良質な水の供給、土砂災害の防止・軽減、地球温暖化の防止、生物多様性の保全など私たちが生活していくうえで大変重要な働きをしています」とある。そんな大事な地域に、ブルドーザーを入れ、森林をなぎ倒しても構わない。国が許可する。
日本の国土の7割は森林だそうで、ちょっとくらいは開発したって構わないだろう。ところが、私がゼミの研究中に調べたところ、リゾート法の下で国に届け出された各地の計画面積を合計すると、日本の国土面積の約2割になった。さらにゴルフ場開発計画に至っては、国土の25%になった。国の面積の4分の1がゴルフ場になる勢いだった。
信じられないと思うなら、昼間、羽田空港に着陸する飛行機に乗ってみるといい。風向きによって変わるけれど、たいていは房総半島上空を通過する。そこから見下ろせば、緑の大地に無数の虫食い穴のような光景が広がる。すべてゴルフコースだ。房総半島は東京に近いから、あっという間にゴルフコース開発が進んだ。私は空からこの景色を見てしまった。この惨状が日本全土に広がる可能性があった。そして、こんな馬鹿げた騒ぎに荷担するわけにはいかないと思った。
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