京急電鉄のカジノ構想で注目、「統合型リゾート(IR)」が“うさんくさい”ワケ:杉山淳一の時事日想(3/6 ページ)
京急が統合型リゾート(IR)を運営する「カジノ構想」を発表した。リゾートというと聞こえはいいけれど、その裏が分かるといきなりうさんくさい言葉になる。27年前の「リゾート法」の悪夢を忘れちゃいけない。なぜわざわざ「IR」と略すのか、なぜ「カジノ」とはっきり言わないのか。
「リゾート」を「カジノの隠れみの」にするな
私は賭け事は嫌いではない。宝くじはよく買うし、競馬はときどき、友人が協同馬主となったレースで馬券を買っている。麻雀も好きだ。もちろん建前上の景品はチョコレート(笑)。最近は麻雀そのものがゲームとして楽しく、獲物にはこだわらなくなった。アニメやタレントとタイアップしたパチンコもやってみたいけど、何年か前に入ってみたら、悲しいことに最新式の玉貸しの方法が理解できなかった。
『深夜特急』(沢木耕太郎著)の中で、マカオで行われているギャンブル「大小」の場面には心躍る気分だった。もし日本にカジノができたら行ってみたい。きらびやかで楽しそうだ。だから、「カジノ」には反対しない。
しかし「カジノ」を隠すかのように「リゾート」という体裁を取るやり方はよくない。
リゾート。なんと心地よい響き。楽しげなイメージの言葉だ。青い海。緑の高原、プール付きのホテル、あるいは森の中のコテージ。遊びに行くだけなら、その程度の認識で問題ない。どうぞ行ってらっしゃい。
しかし、リゾートを「ビジネスの対象」とし、そこに「政府の緩和政策が絡んでくる」と、いきなりうさんくさい言葉になる。大企業と役所が「リゾート」と言い始めたら用心した方がいい。
恥ずかしながら、本欄のトップに私のプロフィールがある。信州大学経済学部卒。アスキー入社。私が「リゾート」という言葉を好ましく思わない理由はここにある。私が大学時代に所属していたのが、まさにリゾートビジネスに関して研究するゼミだった。1980年代後半、まさにバブル景気の上昇期。担当教授は当時のリゾートビジネス研究の第一人者で、ゼミの先輩や同期は研究で得た知識やコネクションを使い、大手ゼネコンなどに就職した。
しかし私はそのラインから逃げた。鉄道とクルマは趣味で取っておいて、3番目に好きな分野で働こうと、傍らのゲーム雑誌の巻末で電話番号を調べ、出版社に連絡した。売り手市場だったからスムーズに就職が決まった。そして教授にひどく怒られた。私は勉強ができなかったから、教授にピッタリくっついて、かばん持ちの代わりに単位をいただいた。それだけに裏切り者と思われたと思う。当時を思い返すと、本当に申し訳なかった。しかし、当時の私は「リゾートはヤバい」と本気で思った。
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