ビッグデータ時代、法律は“プライバシー”を守れるのか:「日常」の裏に潜むビッグデータ(4)(1/3 ページ)
ビッグデータ活用には、ユーザーから提供される情報が不可欠だが、データの収集方法をめぐって問題になるケースが多い。事前説明が不十分であったり、規約改正で収集時とは別の目的で利用されたりといった可能性があるが、現行の法律では、こうした状況に対応しきれないのが現状だ。
編集部より
本記事「ビッグデータ時代、法律は“プライバシー”を守ってくれるのか」は、2014年9月1日に公開しましたが、冒頭の例え話が誤解を招く、パーソナルデータに関する検討会で話合われている内容について、事実誤認があるなど読者の方からいくつかご指摘を受けました。
改めて記事を確認したところ、確かに分かりづらい部分、内容に誤りがある部分がありました。筆者とも相談して、記事内容を修正・加筆し、ここに改めて再公開いたします。読者の皆様、および関係各位におわびして訂正いたします。(2014年12月3日)
短期集中連載:「日常」の裏に潜むビッグデータ
- 第1回:データが価値を持つ時代に、“タダ”のサービスなど存在しない
- 第2回:生活は便利に、でもプライバシーは“丸裸”? ビッグデータ活用の光と影
- 第3回:“匿名”のデータからでも、個人を特定されてしまう理由
- 第4回:ビッグデータ時代、法律は“プライバシー”を守ってくれるのか(本記事)
世界中で活用が進むビッグデータ。これまでの連載で紹介してきたように、新たなサービスやアプリを作る以外にも、新たなビジネスチャンスを生み出す道具として注目されている。
企業が売上げや製品管理など社内のデータベースに蓄積された情報を分析し、次の戦略を打ち出したり、新製品を開発したりと、さまざまな事例を目にすることが増えてきた。日本政府は2013年版の情報通信白書(参照リンク)の中で、ビッグデータの活用が経済成長に与える影響として、データ分析用ソフトウェアの投資や、各企業の生産性向上が期待できるとしており、他国の事例紹介も例に挙げつつ、ビッグデータ戦略を進める方向を打ち出している。
一方で、そうした企業が蓄積しているデータが正当に収集されたものであるかが問題になってきてもいる。本来ならば、利用者の生活を豊かにしてくれるはずのビッグデータだが、日本では活用を疑問視するような動きが続いているからだ。
ビッグデータ利用に対してユーザーが反発
2014年5月に、ヤフーとTカードを発行するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)が、それぞれが保有する、利用者のWeb閲覧履歴と商品購入履歴を相互共有すると発表したところ、利用者からたちまち反発の声が上がった。
ヤフーはすぐにプライバシーポリシーを改定し、情報提供を希望しないユーザーがデータをオプトアウト(削除要請)できる仕組みを用意した。CCCも2014年11月に利用規約を改定し、オプトアウトをTサイト上で行えるようにする予定という。しかし、企業側の解釈で利用規約が変更できることに対する不信感は拭えない。
2014年4月に予定されていた、独立行政法人情報通信研究機構(NICT)の実証実験もユーザーから反発された例といえる。その内容は、JR大阪駅周辺を含む複合商業施設である大阪ステーションシティで、顔認証技術を利用し、不特定多数の通行人の流れを分析するというものだった。
実験の目的は、平時における人の流れをリアルタイムに収集、処理することで、災害発生時における避難誘導などの安全対策を検討するため。収集したデータは処理を行い、顔面積の数%以内にとどめ、統計処理後に第三者に提供するデータも「個人情報」に該当しないもののみにするとしていた(参照リンク)。
しかし、市民から実験内容を懸念する声があがり、有識者からも「本実験に係る個人情報保護等の制度的な課題や技術的な課題のみならず、市民の方々のご懸念にも十分配慮した対応が必要」との意見もあったことから、実験を延期すると発表している(参照リンク)。
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