ご存じ? 今「新日本プロレス」が盛り上がっている:臼北信行のスポーツ裏ネタ通信(2/4 ページ)
「プロレス? 昔は好きだったけどなあ」という人も多いのでは。日本のプロレス界は長きに渡って低迷を続けているが、実は1社だけ“ひとり勝ち”をしている団体がある。「新日本プロレス」だ。
すべてのジャンルはマニアが潰す
大手カードゲーム会社の「ブシロード」は2012年、新日本プロレスを買収した。新日本プロレスの売上高をみると、2012年度は11億4000万円だったが、2014年度は22億円を見込んでいる。急成長の背景に、ある人物がいることを忘れてはいけない。2013年9月末まで新日本プロレスの会長を務めていたブシロードの創設者・木谷高明(きだに・たかあき)氏だ。“メガネ姿の七三分けスタイル”がトレードマークで多くのメディアにも登場している著名な実業家なので、ご存じの方もたくさんいるだろう。
そのカリスマ実業家が、なにゆえに新日本プロレスを買収したのか。新日本プロレス前オーナー企業であるゲーム会社「ユークス」と親交の深かった木谷氏は、その関係で「ブシロード」が新日本プロレスの大会でスポンサーになることが何度かあり、密に携わっているうちに「プロレスだったらキャラクターコンテンツとしていけるのではないか」との思いを強めたという。
ユークスから新日本プロレスを買収した木谷氏率いるブシロードは、「G1クライマックス」や「レッスルキングダム」などのビッグマッチでワンシリーズ1億円とも言われる広告費をかけたり、所属レスラーをテレビCMや人気バラエティ番組に数多く出演させたりするなど大掛かりな“広告宣伝作戦”を開始。そして自社製品でカードゲーム「キングオブプロレスリング」を販売する連動手段も取った。
ブームが起こるのをただひたすら待つのではなく、世の中の人々に“時代に乗り遅れないようにしなければ”と思わせるような「新日本プロレスブーム」を自らの手で作り出そうと考えたのである。その結果が売上高の急上昇――。これはビジネス戦略上の大勝利と言っていい。その秘密について木谷氏は、こう赤裸々に打ち明けている。
「コアなユーザーがライトなユーザーを拒絶していたがために、プロレスが衰退していった面もありました。僕は『すべてのジャンルはマニアが潰す』と思っていますから。ただ、今のプロレスに関しては、そんな排他的なコアユーザーは少なくて、みんなでプロレス界を盛り上げたいという気持ちが強い」
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