日本国債の“暴落”はいつ起きる?:藤田正美の時事日想(1/2 ページ)
「危ない」と言われ続けながらも、日銀の量的緩和に支えられてきた日本国債だが、さすがにそんな状況がいつまでも続くわけがない、というのが大方の予想だ。本当に国債は暴落するのか、そしてそれはいつ起きるのだろうか。
著者プロフィール:藤田正美
「ニューズウィーク日本版」元編集長。東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」
ウクライナ危機に「イスラム国」――国際情勢の混乱に資本市場が揺れているが、それよりも市場を仰天させたのは、資産運用会社「PIMCO(パシフィック・インベストメント・マネジメント・カンパニー)」の共同創業者であり、「債券王」と呼ばれたビル・グロス氏が同社を去ったことだった。
43年もの間、運用の責任者を務めて実績を上げてきたのに、なぜ突然去ることになったのか。市場ではさまざまなうわさが流れているが、まだグロス氏の行動を理解しきれていないのが現状だ。
PIMCOの総資産は2兆ドルに達する。1ドル100円で換算しても200兆円だから日本の国家予算の2倍を優に超える規模だ。中でもグロス氏が担当していた債券ファンドは2220億ドル(約22兆円)の規模だった。グロス氏の移籍先は、運用資産が1300万ドル(約13億円)のジャナス・キャピタルグループ。金額ベースで言えばその規模は1000分の1以下だ。これについて、ロイターは「米国の大統領が、人口1万8800人の町の町長になるようなもの」とたとえた。
この突然の辞任劇の裏には、個人的な確執もあっただろう。実際、後継者と目されていたモハメド・エルエリアン氏は、2014年初頭に同社を去った。しかし、もっと重要なことは、彼のファンドの運用成績が下がっていたことだ。
2013年には直近20年間で最大の損失を被ったが、2014年に入っても成績は上がらず、彼のファンドは下位20%にランクされるという屈辱も味わっている。グロス氏は市場のトレンドを正確に読むことに定評があったが、最近のトレンドは、従来の理論や経験では読み切れないのかもしれない。
消費増税に失敗すれば、日本国債は暴落する?
日本がまさにその典型と言える。年間GDP(国内総生産)の約2倍にあたる1000兆円もの借金を国家が抱え、なおかつ1%を下回る金利で、10年もの長期国債を発行できるのだろうか。しかも日本の場合は、財政再建への道筋すら見えていない。
2015年10月に予定されている、消費税引き上げ(8%から10%へ)を実施するかどうかはこの秋に決定することになっている。もしここで、決定を先延ばしにすれば「日本政府には財政再建の意思も能力もない」とみなされ、日本国債は壊滅的な打撃を受けるだろう。それが財政再建派(歳入を国債ではなく増税でまかなうべきだとする立場)の原則論だ。
グロス氏も基本的にはこの議論に賛同していた。そのため、4年ほど前に英国の債券市場を「ニトログリセリンのベッドに座っているようなもの」と言い放った。債券利回りが上昇(債券価格は下落)すると読み、投資すべきではないと言ったのである。しかし実際には、英中銀が国債を購入して量的緩和に踏み切ったため、金利は低下した。
日本国債も常に“暴落する”と言われながら、日銀による異次元の金融緩和によって価格が支えられてきた。常に日本国債を売りに回っていた外資系のファンドは、負け続けてきたと言える。
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