“立派な情報操作”にご注意を! カジノにまつわるいかがわしさ:窪田順生の時事日想(1/3 ページ)
「カジノにまつわる議論」が熱を帯びてきているが、かなりいかがわしい話が横行している。法案も決まっていないのに「(カジノができるのは)大阪、沖縄でほぼ決まり」「運営は外資に任せなければいけない」といった情報が出てくるのはなぜか。
窪田順生氏のプロフィール:
1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。
先日、某週刊誌から「情報操作」をテーマにした取材を受けた。そのなかで「最近みていてこれはなかなか見事だと思う情報操作の事例はありますか?」と尋ねられたので、迷わずに「IR(統合リゾート)にまつわる議論」と答えた。
薄々勘づいている方も多いと思うが、現時点のIRにまつわる情報というのは、かなりいかがわしい話が横行している。法案も決まっていない段階なのに、「2020年までに3カ所、そのうち大阪、沖縄でほぼ決まり」なんていったい誰がそんなことをほざいているんだという与太話が、デーンと日経新聞の紙面を飾ってしまう。
この背景には、IRというものがまだまだなにも実態がなく、まずはどうにか推進法を通したいという方たちがいらっしゃって、もはや「カジノができるのは既定路線」みたいな情報をメディアにバンバン流すことで、「機運」を高めようとしていることがある。PRや広告で言うところの「世論形成」やら「空気づくり」というやつだ。
もちろん、立派な情報操作なので実態はない。推進派、あるいは海外のIRオペレーターによるポジショントークに過ぎないのだが、今のところ効果てきめんで、ウソから出たマコトではないが、与太話がさも常識のように語られることも多い。
その代表が、海外IRオペレーターたちとかカジノの専門家なる人々がふれまわるこんな主張だ。
「日本にはカジノ運営のノウハウがないので、海外IRオペレーターに頼らなくてはいけない」
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