京急電鉄のカジノ構想で注目、「統合型リゾート(IR)」が“うさんくさい”ワケ:杉山淳一の時事日想(1/6 ページ)
京急が統合型リゾート(IR)を運営する「カジノ構想」を発表した。リゾートというと聞こえはいいけれど、その裏が分かるといきなりうさんくさい言葉になる。27年前の「リゾート法」の悪夢を忘れちゃいけない。なぜわざわざ「IR」と略すのか、なぜ「カジノ」とはっきり言わないのか。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
日本に「カジノ」はない。しかし、公営競技場はある。競馬場、競輪場、競艇場、オートレースだ。
鉄道会社にとって、公営競技場は重要な集客施設だ。京王電鉄は競馬場線という東京競馬場への送迎路線を持っているし、京成電鉄も沿線に中山競馬場がある。西武多摩川線も多摩競艇場への送迎路線といえる。LRT(次世代型路面電車システム)で成功した富山ライトレールも富山競輪場の存在は大きいはずだ。
公営競技場の集客と鉄道の関係がよく分かる事例は、名古屋鉄道蒲郡線の蒲郡競艇場前駅だ。1968年以来、蒲郡競艇場の最寄り駅だった。しかし1988年にJR東海が蒲郡競艇場前駅に隣接して三河塩津駅を開業すると、競艇場利用客は名鉄からJR東海にごっそりと移ってしまった。国鉄が民営化され、本気で攻めの姿勢を見せた典型でもある。この約10年後、名鉄蒲郡線は廃止検討路線となり、現在は地元自治体が支援している。
鉄道会社の中でも、京急は沿線に公営競技場が多い。大井競馬場、平和島競艇場、川崎競馬場、川崎競輪場などがある。かつては横浜市に花月園競輪場があったけれど、現在は公営競技は終了している。これらの施設は京急電鉄にとっても乗客増につながる。とくに平和島競艇場の主催者は東京都府中市だけど、隣接する商業施設「BIGFAN」も含めて京急グループの京急開発が運営し、送迎バスを京急バスが運行している。
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