覚えにくい? 「新函館北斗」という駅名が残念な理由:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
JR北海道は11日、北海道新幹線の駅名を「新函館北斗」「奥津軽いまべつ」と発表した。そこに違和感を抱く理由は、地元のエゴ丸出しで、利用者のメリットを考慮しないから。決まったことに異議を唱えても仕方ないから、今回は「覚えやすい駅名」と日本語のリズムを考察してみよう。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
駅名は鉄道の事業者や利用者が識別するための記号である。東京に大阪駅があっては困るし、大阪に札幌駅があっても困る。福岡県に京都郡という地域があるけれど、そこに鉄道を通して駅を作ったとしても、京都駅にはならない。きっと旧国名をつけて「豊前京都駅」などとなるだろう。日本全国に同じ地名の地域はたくさんあって、国鉄時代は駅名の混同を避けるため、旧国名を付けて区別する習慣があった。
駅は地域の玄関口でもあるから、地域を代表する名前になる。それは駅に訪れる人も、駅周辺に暮らす人にとっても同じ考えになるはずだ。ところが、駅が複数の地域に隣接すると、駅名の選定は地元の争いのタネになってしまう。いまでも新路線の開業時は多少なりとも揉めごとになる。新幹線の駅になると、さらに争いは大きくなる。「新山口駅」「燕三条駅」の駅名争いは、地元だけではなく、鉄道ファンにも知られている。
「新函館北斗駅」も決定までは難儀したという。計画当時の仮駅名は「新函館」であった。北海道新幹線は新青森と札幌を結ぶ。最短距離を採用すると江差経由となるけれど、函館は北海道の玄関口として歴史があり、経済基盤もある。当然立ち寄るべき地域である。
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