「竜飛海底駅」が教えてくれた、新たな“商機”:杉山淳一の時事日想(1/5 ページ)
JR北海道の津軽海峡線「竜飛海底駅」の公開が終了した。見学できるのはツアー客のみだったが、来年の3月31日には駅自体も廃止となる。しかし、この施設の本来の役目は非常口である。駅としての役割のほうが「例外的処置」だったのだ。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP、誠Styleで「杉山淳一の +R Style」を連載している。
まず、多くの人が誤解されている点を説明しておきたい。竜飛海底駅には今後、列車が停車する予定はない。しかし、青函トンネル記念館の営業は今後も続くし、体験坑道へ降りていくケーブルカーも運行を継続する。青函トンネル内の体験坑道の見学は引き続き可能だ。竜飛海底駅付近の体験坑道にはケーブルカーがあって、地上の青函トンネル記念館と通じている。
体験坑道は青函トンネル記念館の施設である。今回の「終了」は「列車で竜飛海底駅を利用するツアー」のみ。今後は、バスやクルマで青函トンネル記念館へ行き、地上から体験坑道へ降り、また登ってくるコースだけになる。
竜飛海底駅の列車停車扱い終了を受けて「最後の見学ツアー」などという言葉がひとり歩きしてしまったため、青函トンネル記念館は困惑している(参照リンク)。これから青森方面へ旅行される人は、ぜひこの施設に立ち寄ってほしい。記念館も勉強になるけれど、竜飛岬の突端からの景色は素晴らしく、日本で唯一の「階段国道(339号線)」もある(関連記事)。訪れる価値のある場所だ。
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