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「普段と同じ」をさりげなく 東急多摩川線の「キヤノンダイヤ」が見事:杉山淳一の時事日想(5/5 ページ)
この夏、東急電鉄が興味深い施策を行った。7月7日から9月26日まで、平日早朝に東急多摩川線と池上線で増発した。その理由は意外にもキヤノンが関係していたらしい。調べてみたら、これはなかなか粋な施策だった。
キヤノンの広報に聞いてみた。東急電鉄の多摩川線の増発は知っていたか。実際に通勤して実感できたか。
「増発については知っていました。ただ、実感できたかというと、正直なところ分かりません。社内の話題にも出ません。普段使わない時間帯の電車に乗っているわけで、この時間帯はこんな感じなのだろうな、としか思わなかったでしょうね」
東急多摩川線の電車は、同じ時間帯でも混み方が違うという。東横線や目黒線の急行から乗り継がれる電車は混むし、乗り換え客が少ないタイミングで多摩川駅を発車する電車は比較的空いている。だから、いつもと同じ電車で変化があれば分かるけれど、時間帯が変われば分からない。ごもっともである。
では逆に、普段と違って、何か不自由なことはあっただろうか。
「いえ、いつもと同じように混んでるなぁと(笑)。普段通りに通勤できましたよ」
「普段通りでした」これは東急にとって賛辞とも受け取れる。増発は実感できないとしても、増発したからこそ「普段通り」になったのである。増発しなければもっと混んでいたはず。乗りきれず次の電車を待つ、という人も増えていたかもしれない。
どこから要請されるわけでもなく、地域の情報に反応し、さりげなく、普段と同じサービスを提供する。東急電鉄の夏の増発ダイヤは、公共交通機関はこうあるべし、というお手本と言えそうだ。
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