「誰でも自在に操れる」――新型スポーツカー「RC F」に込められたレクサスの伝統:開発者インタビュー(1/5 ページ)
レクサスブランドとして実に4年ぶりとなるスポーツクーペタイプを発売したトヨタ自動車。その中でもフラッグシップモデルに位置付けられる「RC F」の開発責任者に、ジャーナリストの神尾寿氏がその魅力を聞いた。
2014年10月、トヨタ自動車が展開する高級車ブランド「レクサス」は、2010年以来となるスポーツクーペタイプを発売した。約4年間という時を経てどのような進化を遂げたのか。新型車の狙いとは何か。同社でレクサスの製品企画を担当する矢口幸彦氏に、ジャーナリストで国際自動車通信技術展企画委員長などを務める神尾寿氏が聞いた。
人々のライフスタイルを豊かにするクーペ
――なぜこのタイミングでレクサスの新型スポーツクーペ「RC」シリーズ、ならびにクーペの中でもフラッグシップとなるスポーツモデル「RC F」を発売したのか、この狙いをお聞かせください。
レクサスはプレミアムブランドとして展開しています。そうである以上、自動車としての付加価値を顧客に提供する必要があります。これまでラグジュアリー感や信頼性の高さは認められてきましたが、もっと人々をワクワクさせるようなエモーショナルな部分を訴求して、顧客のライフスタイルを豊かにしたいという思いがあります。
そこで、エモーショナルな面を訴求する上で最も分かりやすい商品としてクーペタイプを提供しています。レクサスでは2010年に生産を終了した「SC」以降、しばらく期間が開いていましたので、満を持しての発売となったわけです。
――レクサスのブランド全体を見ると、2014年にクロスオーバーSUVタイプの「NX」を発表するなど、バリエーションが広がったという印象を持ちます。このあたりは意図的に拡大させているのでしょうか。
ほかの自動車メーカーのプレミアムブランドと比べると、バリエーションはまだ少ないですが、ブランドとして成熟し、いろいろなタイプのレクサスをお客さまに選んでいただける時期が来たと考えています。
――矢口さんはスポーツセダン「IS F」の開発にも携わっていました。IS FとRC Fの共通点、あるいは開発における違いなどがあれば教えてください。
2007年にIS Fを販売開始したとき、市場からは非常に好意的に受け止めてもらいました。そこから毎年改良を重ねて、多くの方に素晴らしいクルマになったと言ってもらえるようになりました。これをベースにもう一段ステップアップしたいと考えました。
レクサスでは、スポーティーなイメージを訴求する「F」というブランドを展開しています。その頂点にあった「LFA」の販売が終了した後は、IS Fがその中核を担っていました。そこで、LFAとIS Fの双方の要素を兼ね備えたモデルの必要性を感じたわけです。モータースポーツを含めて活用できるクーペ―タイプのFブランドを仕立てようという発想があり、それがRC Fを開発した基本の考え方となりました。
ただし、ハードルの高いスポーツカーにする気は毛頭ありませんでした。というのも、レクサスのコンセプトは、さまざまな運転スキルレベルの人が楽しめるクルマだからです。たとえスポーツモデルでもそれは変わりません。
関連記事
- プレミアムブランドの育て方:「クルマを使ったプロモーションが刺さらない」――レクサスがたどりついた結論とは?
夜の博物館を小型ロボットヘリが飛びまわる動画が話題になった。レクサスのプロモーション動画だ。クルマへの興味を失った人が増えていく中、レクサスのブランディングチームは従来と異なる方法を模索している。 - 高級車のカフェ参入相次ぐ:レクサスの“オトナの隠れ家”に行ってみた
「若者のクルマ離れ」が叫ばれているが、自動車メーカーのブランド戦略はどう変わったのか。トヨタ自動車の体験スペース「INTERSECT BY LEXUS」を訪問し、カフェの魅力や狙いを探った。 - 「IS300h Fスポーツ」テストドライブ:女性目線で感じた「IS300h Fスポーツ」の魅力──レクサスの繊細なハイブリッドスポーツセダン
2013年に発売された新型レクサスIS。ハイブリッドとスポーティな機能を兼ねたIS300h Fスポーツで東京の街をドライブした。 - 東京モーターショー2013:レクサス、新型クーペ「RC」とSUVコンセプト「LF-NX」をサプライズ公開
東京モーターショーで世界初披露が予定されているプレミアムクーペ「レクサス RC」と、ターボエンジンを搭載予定のSUVコンセプト「LF-NX」を両国国技館で一足先に披露しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.