プロ野球の契約更改には、3つの問題がある:赤坂8丁目発 スポーツ246(1/3 ページ)
プロ野球のオフシーズンで「恒例行事」となっているのが、契約更改交渉だ。最近、各球団の主力選手たちがフロント側と交渉を行っている様子が報道されているが、交渉については不透明な部分が多い。なぜなら……。
臼北信行(うすきた・のぶゆき)氏のプロフィール:
国内プロ野球、メジャーリーグを中心に取材活動を続けているスポーツライター。セ・パ各12球団の主力選手や米国で活躍するメジャーリーガーにこれまで何度も「体当たり」でコメントを引き出し、独自ネタを収集することをモットーとしている。
野球以外にもサッカーや格闘技、アマチュアスポーツを含めさまざまなジャンルのスポーツ取材歴があり、WBC(2006年第1回から2013年第3回まで全大会)やサッカーW杯(1998年・フランス、2002年・日韓共催、2006年・ドイツ)、五輪(2004年アテネ、2008年北京)など数々の国際大会の取材現場へも頻繁に足を運んでいる。
プロ野球のオフシーズンで「恒例行事」となっているのが、契約更改交渉だ。ここ最近のスポーツニュースでも各球団の主力選手たちがフロント側と交渉を行っている様子が続々と取り上げられているが、このプロ野球の契約更改交渉については不透明な部分が多い。今回は、その3つの問題点を挙げてみる。
1つめの問題点は「年俸額」だ。これは基本的にメディアで報じられる際にはほとんどが「推定」と補足表記されている。なぜそうなるかと言うと、文字通り推測される額であって球団側から正式発表されたものではないからだ。では一体どういう手順で推定年俸を予想するのかといえば、交渉後に会見場へ姿を見せた選手に各メディアの担当記者たちが「だいたい○○○○万円ぐらい?」などと直接質問をぶつけ、相手の表情を見ながらおおよその額を割り出すというのが一般的な手法である。
選手が会見場を退出した後、さらに各担当記者が集まって推定年俸の調整を行うので各報道による金額の誤差もほとんどなく、仮に生じたとしてもそれほど大きくはならない。かなりアバウトなやり方だが、選手たちに聞いてみると「だいたい当たっていることがほとんどだが、その中には“大ハズレ”ということもある」という。
それはいいとして、そもそも何ゆえに「推定年俸」なんていうまどろっこしい表記で各メディアは報じ続けなければいけないのか。もうプロ野球界を取材して15年近くになるが、昔と変わらず今もずっと多くのファンからそういう疑問の声を耳にする。だが、その答えは簡単。日本プロ野球の球団がいまだ閉鎖的だからである。
米メジャーリーグのように所属選手の年俸を公開制にすればすべてはクリーンになるはずなのだが、これは日本の球団側にとってみれば非常に都合が悪い。前記した“大ハズレ”の推定年俸とされる大物選手の存在も、実はその1つの理由だ。
「『金満球団』と揶揄(やゆ)されている球団ではFAなどで獲得した選手に対し、報じられている推定年俸よりも巨額の超法外年俸を裏で支払っているなんていうことは割とよくある話。そこが明らかになってしまうと、球団内外から一気に『なんでこんなにカネをかける必要があるのか』などと猛反発を食らってしまう可能性が高い。メジャーと違って日本球界はこういう密室だから、うまく行っているところも正直あるのです」(セ・リーグ球団関係者)
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