日本の若者が「自殺」しないために、なにができるのか:自殺させないために(2/3 ページ)
厚生労働省の人口動態統計によれば、平成25年度に死亡した日本人は126万8432人。このうち20〜39歳の最多死因は自殺となっています。今回は、自殺の原因の1つとも言われるうつ病について考えます。
自殺させないために
では、20〜39歳の人たちの自殺の原因は何なのでしょうか?
平成25年版の自殺対策白書によれば、20〜39歳の人たちにおける自殺の原因として最も多いのは「健康問題」とされ、主にうつ病によるものであることが示されています。
原因が分かってはいないものの、うつ病とはなんらかの原因によって脳の機能不全が起き、脳内あるいは体内のホルモン分泌に異常をきたしているとする説が有力で、この点において「単なる気分の落ち込み」とは区別されるでしょう。薬による治療が存在し、効果を示しているということも、その説を裏付けるものかもしれません。
しかしそれと同時にうつ病においては、患者と治療者(医者のみならず、周囲の人も含む)とが良好な関係にあることを前提とした言葉の介入がとても重要視されており、周りの人たちの言葉が治療に与える影響も大きいと言えるでしょう。
それらの介入なしに安易に薬物療法などに頼ることは危険であり、患者の背景や病状の理解に努め心理的教育を行っていかなければなりません。
身の回りでうつ病の疑いがある人がいる場合は、次のような対応をとることが重要です。
共感を示す
うつ病の患者は、「これは病気なんかではなく怠けだ」「性格だからどうしようもない」「もうダメだ」などのような否定的な考え方に陥りがちです。これを念頭において、まずは「共感」を示すことから治療は始まります。
「こういう状況ですから、そう感じるのも無理はないでしょう」などの言葉が適しているかもしれません。
ここで治療者の立場として気を付けなければならないのは、共感するあまり患者の感情に巻き込まれないようにすること。あくまでも違った視点からアドバイスをしなければならず、具体的に患者が特に困っている――例えば、不眠で悩んでいるなどに焦点を当てることが大切です。
うつ病を伝える
患者には「うつ病である」ことや「うつ病の可能性がある」ということを伝えなければなりません。そうして「今の状況は病気によって引き起こされているので、自分を責める必要はない」ということを伝えましょう。
そして、うつ病とは何が起きているのかを分かりやすく説明することで、その原因を排除しやすい環境にします。具体的には、うつ病では「ストレスを感じる→ものの見方が否定的になる→ストレスが増える」という悪循環が起きていることがあります。
「一旦ストレスから考えを離しましょう」とアドバイスしたり、「そんなにストレスに感じることはないんですよ」というように、患者のものの捉え方を変えていくことも必要となります。
がんばらない、気晴らさない
「がんばろう!」という声かけによって「なにをがんばればいいか分からない」「がんばれない自分はダメだ」などの否定的な考えに陥ることがあるので、安易に励ますことはあまり望ましくありません。
また患者は喜びや興味を喪失している状態にあるので、「気晴らし」で楽しい思いができないかもしれません。気を晴らすどころか「断ってはいけないんだ」という心理的ストレスを与えてしまう可能性があります。
医療機関をすすめる
うつ病はその病気の性質から、うつ病と分からず医療機関にかからない人やかかってもうつ病と診断されていない人が少なくないと言われています。きちんと処方された薬は効果がありますから、医療機関をすすめることも周囲の人ができることです。
また大切なこととして、うつ病以外のなんらかの病気が原因となったり、服用している薬の副作用としてうつ状態に陥っている場合があります。
その原因となる病気を適切に治療したり、薬を変えることでもうつ状態が消えることがあります。そういう意味でも、医療機関をすすめるのはよいかもしれません。
約束する
治療者と患者との間に信頼関係があるのであれば「約束」が意味をなしてきます。具体的には「うつ病による一時の極端な感情に振り回されないこと。あるいはその感情によって自殺などを含む大きな決断をしないこと」を約束することに当たります。
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