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プーチンの「不満の冬」が始まる――日本はロシアからエネルギーを買うべきか否か?:藤田正美の時事日想(2/2 ページ)
原油価格が下がっている。今年前半1バレル=100ドル超えだったWTI価格は、最近では70ドルを切る日もあるほど。原油相場の下落に頭を悩ませているロシアのプーチン大統領にとって、今年の冬は厳しいものになりそうだ。
鍵を握るのは原油価格
原油価格が下がり、国庫収入が減って、国民の暮らしにまで影響が及べば、プーチン大統領の支持率ももちろん下がる。まだあと10年は政権の座にいたいと考えているプーチンにとって、ここで支持率を失うわけにはいかないのである。とはいえ、中国経済の減速は続きそうだし、インドは利下げが期待されていたがラジャン・インド中央銀行総裁は政策金利を据え置いた。中国とインドの成長率が戻ってくるということにならないと、原油相場が持ち直すのも難しそうだ。
ロシアが財政を賄うためには、原油相場で1バレル90ドルが必要だという。しかし来年はそれを大きく下回ることになるだろうというのが専門家の見方だ。一方、日本にとってロシアはエネルギー調達先を多様化するための有力候補だ。しかしロシアが減速すればするほど、日本がロシアからエネルギーを大量に買えば、西側諸国から不興を買うに決まっている。「制裁がようやく効果を上げつつあるときに、余計なことをするな」というわけである。
ロシアの熊がどれほど弱っているのか、正確なところは分からないが、手負いの熊ほど危険なものもない。プーチン大統領と何度も会っている安倍首相も、うかつに近づけば噛まれるかもしれないし、手を差しのばしたりすると後ろから弾が飛んでくる可能性もある。「地球儀を俯瞰する外交」も楽ではない。
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