通路での「右側通行」指示が混乱を招く:INSIGHT NOW!(2/2 ページ)
駅などの構内通路にある通行方向表示。せっかくあるのに、時として迷惑になることもしばしば。特に首都圏と大阪では、右側歩行を指示することはかえって混乱の元なのだ。
なぜ右側通行にするとダメなのか?
では、なぜ通路を右側通行にしている場合に人の流れがスムーズでなくなるのでしょうか。都心の比較的狭い通路や歩道を通る際、特に何の通行方向指示もない場合には、左側に寄って逆方向から来る人とすれ違おうとする人が多数派だという行動観察結果が幾つもあるそうです。どうやらそれと関係しているようです。つまり、自然に任せておけば、首都圏の歩行者の多数は左側通行しようとするのに、通路の管理者がその逆方向を指示しているため、表示通りに進もうとする人と表示を無視して進もうとする人がぶつかりそうになるわけです。
駅や商業施設などでの通路を管理する方々は当然ながら人の流れをスムーズにしたいと考えているはずで、だからこそ通行方向を示す矢印や「ここでは右側通行」といった表示を掲げているわけです。であればぜひ、多数派の歩行者の自然な行動パターンを取り入れた動線を設計していただきたいと切に思います。この流れに逆らう動線を設計すると、意に反して、かえって歩行者同士がぶつかりやすくなる通路が出現することになってしまいます。
ちなみに、この「歩行者は左側通行が自然」というのは絶対的な法則ではありません。首都圏および大阪地区に限ると言ってもよいかもしれません(名古屋ではあまり聞きません)。
都心ではかなり顕著なことに気付いて、「武士が右手で刀を抜きやすくするため」とか「左側にある心臓を守る心理が働くため」とか、いかにももっともらしい説を述べる人もいますが、地方都市に行けば人によってバラバラです。通りを歩く人たちを描いた江戸時代の絵ではやはりバラバラだそうです。ドイツでは逆の右側歩行がかなり徹底されていますが、ほとんどの国ではやはり人によってバラバラです。つまり、人間本来の習性や心理とは全く関係なく、単に社会的に習慣付けられているかどうかのようです。
ついでの話ですが、周囲が左側歩行しているのに「クルマは左、人は右だ」という誤った信念のために、流れに逆行しようとする頑固者もたまにいるようです(実行はせずともそうすべきと信じている人の「居酒屋演説」を聞いたこともあります)。日本での「クルマは左、人は右だ」という道路交通法は、あくまで歩道と車道の区分のない一般道路を通行する際に適用されるもので、クルマが通行することのない構内通路や歩道には適用されません。念のため。(日沖博道)
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