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なぜ「ゴキブリ1匹」でペヤングは消えたのか窪田順生の時事日想(1/3 ページ)

「ペヤングからゴキブリ出てきた」というクレームを受け、まるか食品が全商品の生産中止に踏み切った。同時期に、日清食品でも同じような騒動あったのにもかかわらず、大きな問題に発展しなかった。なぜまるか食品ばかり叩かれるのだろうか?

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窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 「ペヤングソース焼そば」が店頭から消えてしまった。

 12月2日、Twitter上で「ペヤングからゴキブリ出てきた」と写真付きで投稿し、拡散したことに端を発する問題を受けてのことだ。ペヤングを製造するまるか食品によると「混入の経緯は不明」ということなので、製造後に何者かが意図的に虫を仕込んだ可能性も捨てきれない。しかし、ゴキブリに加熱処理が施されていたことが明らかになり、製造過程での混入の可能性も否定できないとして全商品の生産中止・自主回収に踏み切ったのである。

 奇しくも同じ時期に、「ゴキブリと推定される」という虫混入があった日清食品も自主回収を行っているが、こちらは混入が確認された「Spa王」などの商品に限定している。なぜまるか食品はすべての商品なのか。

 確かに、まるか食品には伊勢崎市にある本社工場と赤堀工場の2つしかない。ペヤングの中に「目視でゴキブリだと分かる形」(まるか食品)でドーンと入っていたというのもミステリーではあるが、「ゴキブリは1匹見たら30匹いると思え」という言葉に従えば、1つの工場で出たことは、近くの工場でも起きるかもしれないと考えるのもよく分かる。

 その一方で、全商品回収に踏み切ったのは、ブランドイメージがこれ以上、地に墜ちるのを防ぐためではないかという見方をする人もいる。先ほどの日清の自主回収がわりと迅速に対応した風に報じられ、「神対応」なんてもてはやされていることに対して、「まるか食品の対応は酷過ぎる」なんて叩かれているからだ。

 初動対応で「ごめんなさい! すぐに全品回収します!」ならスゲーと思われるかもしれないが、ボコボコに叩かれた後での対応というのは、どんなに誠意を込めても「叱られたからやっているんでしょ」としか見えない。さらに言えば、「カップめんからゴキブリ1匹でも出たら全商品回収」なんて悪しき前例もつくって同業者にも迷惑をかけている。そういう意味でも、最悪の危機対応と言わざるを得ない。


消費者から「ペヤングの中にゴキブリが入っている」というクレームを受け、まるか食品は全商品の生産中止・自主回収に踏み切った
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