なぜ「ゴキブリ1匹」でペヤングは消えたのか:窪田順生の時事日想(3/3 ページ)
「ペヤングからゴキブリ出てきた」というクレームを受け、まるか食品が全商品の生産中止に踏み切った。同時期に、日清食品でも同じような騒動あったのにもかかわらず、大きな問題に発展しなかった。なぜまるか食品ばかり叩かれるのだろうか?
マスコミが「適切」に取り上げたことはない!?
こういう企業側の対応というのはマスコミからすれば非常に「おもしろい」。堀内社長の言葉どおり、「健康被害ではない」のだからもっと柔軟に対応すればよいのにそれができない。この過剰な企業防衛。起こるかもしれないミスを素直に認めることができず、「そんなものはありえません」と目をつぶる。実はマスコミがおもしろおかしく取り上げるのは、外部からの声よりもまずは保身を優先するサラリーマン的自己防衛の滑稽(こっけい)さなのだ。
そういう意味では、まるか食品は最高におかしかった。「よっ! 四角い顔!」なんて庶民的なコマーシャルを流していたイメージからすれば、ゴキブリくらい「ごめん、ごめん、こういうことが今後ないよう気をつけます」なんてフランクに謝罪をするかと思いきや、「お互いのためにツィートは削除してください」なんてモミ消し風の対応というギャップが、ツッコミどころ満載なのである。
マスコミにいるのは、別に裁判官のように国家試験を受けて研修所で「公平とは何か」とかを学んだ人たちではない。ごくごく普通の人たちがOJTで先輩たちの背中からなんとなく「これってジャーナリズムだよね」なんて学ぶ程度である。だから、「おもしろい」という方向にわっと飛びつく。
堀内社長、ペヤングについて「おもしろおかしく取り上げすぎではないか」というご指摘はごもっともです。でも、それはまるか食品が自分たちで「おもしろおかしい対応」をしたからなんですよ。
そもそも、これまでの企業スキャンダル報道をご覧になってください。マスコミの取り上げ方が「適切」だった時なんてないはずですよ。
関連記事
- 世界最速! 「リアルタイム文字おこしサービス」で日本の未来が変わる?
モバイル型情報保障サービス「e-ミミ」をご存じだろうか。沖縄県うるま市にある株式会社アイセック・ジャパンが提供しているこのサービスを見て、筆者の窪田氏は驚いたという。何がスゴいかというと……。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。 - 朝日やNHKが選ばれない時代に、私たちが注意しなければいけないこと
インターネットが勃興し、新聞やテレビといった旧型マスメディアが衰退しつつあると言われている。結果、何が変わったのか。筆者の烏賀陽氏は「ニュース・センターが消滅した」という。その意味は……。 - イケアは何を間違ったのか 地図表記を巡って大騒動
家具やインテリアなどを扱う「イケア」が炎上している。世界地図に「SEA OF JAPAN」という表記があって、韓国人からのクレームがあったわけだが、筆者の窪田氏は「問題はその後のイケアの対応にある」と指摘する。火に油を注いだような対応とは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.