海外進出を検討している中小企業が注意すべきポイントとは?:日本の常識は通じない(2/2 ページ)
アジアに工場や子会社を作るなど、海外進出を進める中小企業が増えている。しかし海外では、日本のビジネスシーンでは想像もしないトラブルやビジネスリスクがあるのも事実。注意すべきポイントについて、TKCのセミナーで聞いた。
「信頼すれども信用せず」が大事〜海外でのビジネスリスク事例
「成功する海外子会社の経営管理(実践編)」に登壇したコンサルビューション株式会社社長の高原彦二郎氏は、海外でのビジネスリスクの事例について紹介した。
高原氏自身が手がけた調査では、請求書の偽造や親族会社への物品の横流し、売掛金の回収を個人の口座で運用されているケースや二重帳簿、タイムカードの偽造など多岐に渡り、中には金利を現金化が可能なことによる不正(ベトナム)や、労災の自作自演(中国)もあったという。また、情報漏えいについては「盗まれた途端に企業生命がなくなる」といい、ルールが徹底されているか監査が必要だとした。
高原氏は、1950年代の組織犯罪研究者ドナルド・R・クレッシーが体系化した「不正のトライアングル」の動機・機会・正当化のうち、機会について「職務分掌・承認権限が曖昧で、(不正を)やってもバレない、内部統制・牽制がなく誰もチェックしていないというのは日本企業の特徴」と指摘。「管理をする対象が日本人ではないことを認識する必要がある。日本の常識だと的はずれな管理になる。”全てを信じている”というのはリスク。イギリスは東インド会社で現地経営者にインド人を起用したが、”信頼すれども信用せず”として能力は買っても売上をごまかしているのではないか、という考え方をしていた」と歴史をひもとき、「ガバナンス」という言葉のもともとの意味である、間接統治によるリスクマネジメントの合理性について説明した。守るべき内容の明確化や本社への報告の義務付け、モニタリングがビジネスリスクの最適化には重要だと述べた。
“マネジメント”の語源は、野生馬を飼い慣らすこと
セッション中、高原氏は「CSA(Control Self Assessment:統制自己評価)」の実例として、経営管理リスクのチェックリストを示した(右図)。不正が多い人件費について「人数によって支払われていますか?」「社会保険の納付人数と人件費の人数があっていますか?」といったYes・No形式の質問が並ぶが、「人員台帳がありますか?」というところで引っかかるケースが多いという。
高原氏は「日本人はリスク感性が薄くて見つけない。コントロールを意識しないと固有リスクが増えていく。不正を起こさないためには機会を与えないようにすることが重要」と話す一方、「“マネジメント”の語源は、野生馬を飼い慣らすこと。欧米ではナショナルスタッフを意のままに動かすため、統制と報奨・人事権を欠かさない経営管理を行っている」と指摘する。現地企業経営を”野生化”させないコーポレート・ガバナンスのためには、(1)国民性や文化の違いの認識(2)経営リスクの見える化(3)継続対応の必要性 この3つが大事だと強調。徹底した事前準備と想定しなかったリスクの最小化が、海外進出の成功には必須だと話した。
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