Webサービス「愛と家のスワッピング」を利用すると、“ムダ”が見えてきた:烏賀陽弘道の時事日想(特別編)(4/5 ページ)
Webサービス「Love Home Swap」をご存じだろうか。直訳すれば「愛と家のスワッピング」。決してエッチなサイトではなく、世界の旅行者がそれぞれの家を交換して、宿代を節約しようというサービスだ。筆者の烏賀陽氏はこのサービスを利用したところ……。
旧来産業から「ルーザー」が出てくる
「ラブ・ホーム・スワップ」も「リフト」も同じインターネットの特質をビジネスモデルに利用している(LHSはロンドンが本社)。需要と供給を一致させるマッチング、分かりやすく言うと「出会い系サイト」だということだ。LHSは「トウキョウに来たいロンドンに住むレイチェル」と「ロンドンに行きたいトウキョウに住む烏賀陽」を引き会わせた。
本来、インターネットがなければ両者は出会うはずがなかった。その存在すら知ることはなかったのである。リフトは「クルマに同乗者を乗せても良いドライバー」と「移動手段が必要な人」を出会わせる。これもインターネットがなかったらありえないマッチングである。英語では「出会いを取り持つ人」を「マッチ・メーカー」という。LHSもリフトも文字通り(マジメな話)「マッチ・メイキングサービス」=出会い系サイトなのである。ネット時代以前でも、ダイヤルQ2のような「出会いメディア」はあった。ネットは、その「出会いの規模が地球規模に拡大している」ところが革命的である。
ええ話やなあ。やっぱりインターネット万歳じゃないか。
いやいやすみません。ひとつだけ暗い話を。このネット・マッチメイキング産業が発達すると、旧来の産業から「ルーザー」(負け組)が出るのは避けられないのだ。
例えば、私とレイチェルがロンドンと東京でホテルで泊まらなかったおかげで、ホテル産業は2つの商機を失ったことになる。リフトでは、P地点からQ地点まで、ドライバーAさんがB、C、Dさんの3人を乗せたとすると、本来4台走るはずだった自動車が1台しか走らなかったということだ。ガソリンの需要は減るだろう。クルマも売れ行きが落ちるに違いない。旧来型の産業にとっては市場縮小である。その芽はすでに生えている。
関連記事
- 朝日やNHKが選ばれない時代に、私たちが注意しなければいけないこと
インターネットが勃興し、新聞やテレビといった旧型マスメディアが衰退しつつあると言われている。結果、何が変わったのか。筆者の烏賀陽氏は「ニュース・センターが消滅した」という。その意味は……。 - なぜLINEの「既読スルー」にイラッとするのか コンセンサスなき紛争
LINE、Twitter、FacebookといったSNSの利用をめぐってトラブルが相次いでいる。PCやスマホなどから気軽に自分の言葉を発信できるのが大きな魅力なのに、なぜトラブルが起きてしまうのか。 - 「ネット世論」を分析しても、選挙の結果は“逆”になる理由
衆議院選挙の投票があり、与党(自民党・公明党)の大勝という結果に終わった。大方の予想どおりとも言えるが、筆者の烏賀陽氏はネット上に飛び交う意見を見ていて、あることに気づいたという。それは……。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.