公立図書館ではベストセラー本を扱うな:INSIGHT NOW!(3/3 ページ)
公立図書館がベストセラー本や人気作家の作品を貸し出している現状は、税金を使って公的な「立ち読み」を促しているようなものだ。出版文化の存立基盤を脅かしていることに気付くべき。
こうした議論をすると、「正義派」の人々が登場して社会的弱者への同情論を語ることがよくあります。いわく、「高齢の年金生活者にはお金に余裕がない人々が少なくない。彼らだってベストセラーを読む権利はある。それを満たして差し上げるのが公的な図書館の役割の1つだ」と。
小生は、大半のベストセラー本は国民の知的資産には何の関係もないし公立図書館が扱わなくてよいと考えていますが、百歩ゆずって、そうした人々にベストセラー本を読む権利があり、それを公立図書館が提供する役割があると政治的意義から認めるのであれば、それもまたよしです。その場合でも、何も発売直後でなくてもいいではないかというのが小生の主張です。
例えば、発売後2年間ほどは公立図書館での貸し出しを禁止するだけでいいのです。そうすれば、本を自腹で買うくらいはお金に余裕があって、しかも人気の本をどうしても話題になっているうちに読みたい普通の消費者は、書店で買って読もうとするでしょう。それによって経済の歯車も回るのです。
そして、こうした禁止処置は人気作家の作品、およびベストセラー本に限るということでいいと考えます。つまり普通の書店に行けば買えるような人気のある本はわざわざ公立図書館で貸し出ししなければよいのです。その代わりその購入費を使って、街角の書店には置いていないような、だけどこれから期待できる地元に縁のある若手作家や、あまり知られてはいないが味わいのあるマイナーな中堅作家の作品などを貸し出して、試し読みの機会を利用者に提供して欲しいのです。できれば書店のように紹介文POPも添えるとなおいいですね。
そうすれば公立図書館に本来求められている、利用者の読書欲も満たしながら「知の喚起」に貢献することにもなり、出版・書店経営の足を引っ張ることもなくなるのではないかと思えます。
短期的には図書館利用者から不満の声が出るかも知れませんが、公立図書館の管理者の方々には日本の出版文化を守るために深慮と英断をお願いしたいものです。(日沖博道)
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