なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか:窪田順生の時事日想(5/5 ページ)
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。
「人造バター」路線への転向
先の調査報告書によると、メーカー努力でマーガリンやファットスプレッドのトランス脂肪酸含有量はかなり減ってきているが、商品によってバラつきがあるし、逆に飽和脂肪酸含有量が大きく増加している可能性を示唆している。現時点ではトランス脂肪酸の表示すらも義務づけられていない日本において欧米のようにいきなり規制などという話にはならないだろうが、明るい未来を予感させるような内容ではない。
もちろん、トランス脂肪酸問題を業界につきつけたはこの報告書が初めてではない。この十数年間、業界は「マーガリンのほうが優れている」とか言っていられない状況に追いやられてるのだ。
バター風味マーガリンは好調だが、実はマーガリン類の生産自体はじわじわと縮小している。マーガリン工業会のデータによれば、1993年に7万4000トンあったものが20年経過して、5万3000トンまで減っている。なかでも顕著なのが学校給食だ。給食のパンといえばマーガリンだったのに、トランス脂肪酸問題の影響を受け、この20年で半分近くになっているのだ。
ただ、マーガリン業界もなにもしていないわけではない。そもそも日本人は欧米人ほどトランス脂肪酸を摂取していないというデータを掲げて、「なんでも摂り過ぎたら毒でしょ、要は程度の問題ですよ」という啓発にいそんしんだり、「実はファットスプレッドはバターよりもヘルシーだ」というプロモーションも仕掛けるなど、復活の道を模索している。そこに現れたのが、「バター風味マーガリン」というわけだ。
長きにわたって封印された「人造バター」路線への転向は、マーガリン逆襲の狼煙(のろし)になるのか。あるいは、衰退への第一歩なのか。注目したい。
関連記事
- 「LEDよりも省エネで明るい」という次世代照明がなかなかブレイクしない理由
「CCFL(冷陰極管)」という証明をご存じだろうか。LED照明にも負けない省エネで低価格な製品だが、筆者の窪田氏は爆発的な普及は難しいという。なぜなら……。 - なぜ日本人はウイスキーを「水割り」で飲むのか?
ドラマ『マッサン』効果でウイスキー市場が盛り上がっている。各社の売り上げが伸びている一方で、気になることも。それは「水割り」。海外の人たちは「ストレート」や「ロック」で飲んでいるのに、なぜ日本人の多くは水割りを好むのか。その理由は……。 - 原料のカカオに何が起きているのか チョコレートが消滅する日
近い将来、チョコレートが消滅するかもしれない――。こんなことを言われても「スーパーやコンビニに行けば、たくさんの商品が並んでいるよ」と思われる人も多いはず。しかし、チョコレートの原料・カカオの生産量が不足しているのだ。 - ミスドとセブンのドーナツ、味はどのくらい違うの? 味覚センサーで分析
セブン-イレブンがドーナツ市場に参入する。「形がミスタードーナツとそっくり」といった声がでているが、味もそっくりなのか。「味覚センサー」を使って、セブンとミスドのドーナツを分析してもらったところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.