なぜ“バターみたいなマーガリン”が増えているのか:窪田順生の時事日想(4/5 ページ)
夏の猛暑が原因で、昨年スーパーの棚からバターが消えた。ここにきてようやく商品が並ぶようになったが、最近は“バター風マーガリン”が売れているという。少し前まではマーガリンがバターをうたう商品は少なかったのに、なぜ急に増えてきたのか。
マーガリンを危険視する風潮
いったいどういう「変心」があったのか。ひとつの理由は、この「バター風味マーガリン」が世に出たタイミングを見ると分かる。「ネオソフト」ではかたくなにバターをうたっていなかった雪印メグミルクだが、「まるでバターのようなやわらかソフト」というバター風ファットスプレッドを2011年9月に出している。同じくJ-オイルミルズが、「ラーマ バター好きのためのマーガリン」を出したのは2011年9月。もうピンときた方も多いと思う。
東日本大震災後、実害や風評も含めて多くの酪農家がすさまじいダメージを受けたのは記憶に新しいだろう。今以上のバター不足に陥った。そのような未曾有な災害によって、マーガリン業界としても長く避けてきた「人造バター」という方向を甦らせざるをえなかったというのは十分想像できる。
ただ、実はそれだけではないかもしれない。この大震災から遡ることおよそ2カ月前、マーガリン業界が激震するようなある出来事が起きているからだ。
食品安全委員会がマーガリン、ファットスプレッド、ショートニングを名指しして、「食品に含まれるトランス脂肪酸に係る食品健康影響評価情報に関する調査」の報告書を公表したのである。
ご存じの方も多いと思うが、トランス脂肪酸には他の脂肪酸よりも心臓疾患に影響を与えるというデータがあり、その人体への有害さゆえ、「食べるプラスチック」などと言う人たちもいて、規制をしている国も多い。このトランス脂肪酸がマーガリン類やショートニングは他の食品と比較しても多いのだ。
このトランス脂肪酸を問題視する動きは近年、健康志向がすすむ米国で顕著だ。ウォールストリートジャーナルによれば、マーガリンを危険視する風潮が進んで、その代わりに下火だったバターが米国食品史上最大の復活を遂げるという現象が起こっているという。
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