脳波で分かってきた「お金の心理」:お金もセンス(1/4 ページ)
人は「本音と建前」を使い分けながら生きている――。このように言われているが、本音の部分を把握することは難しい。しかし、脳派を分析することで意外な事実が明らかに。それは……。
著者プロフィール:
森永賢治(もりなが・けんじ)
1992年、ADKに入社。通信、食品、化粧品、ファッション関連商品のマーケティング・ディレクターを経て、1999年、「金融プロジェクト」リーダーに就任。現在、ストラテジック・プランニング本部長(金融カテゴリーチーム・リーダー兼務)。JMAマーケティングマイスター。
2014年10月に書籍『「お金と心理」の正体』(共著)を刊行。同書籍では、上記金融カテゴリーチームに蓄積された金融コミュニケーションのノウハウ・分析を8つの章に分けて紹介している。
よく言われるように、人は誰しも二面性を持っている。「本音と建て前」あるいは「オモテとウラ」の顔をうまく使い分けながら生活している。この本音の部分、言い換えればインサイトにあたる部分を、他者が正確に把握することは非常に困難だ。
最も隠したい部分であるし、そもそも本人が自分の本音や裏の顔を正確に分かっていないということも多いからである。実際、人は自分の行動の5%しか意識していないとする学説もある。つまり、私たちの日常的な行動の多くは無自覚に行われているのだ。とりわけ、それが顕著に出るのが「お金」にまつわる行動である。
調査で「なぜ、その商品や会社を選んだのですか?」という質問に対して「なんとなく」と答える割合が他の業種に比べ圧倒的に高いのが、実は「金融」である。自分自身を振り返ってみても、お金については「考えそのものがぼやっとして雲をつかむよう」と感じる人が多いだろう。状況やその時期において、お金に対する感情もそのつど変化してくるので、固定したお金観を持ちにくいということも影響している。
某証券会社が、かって非常に興味深いテレビCMを流したことがある。場面は、とある海外の小さな理髪店で、どうやらその日は給料日という設定である。店の主人が従業員の若者に「この給料の2割を貯金するように」と言うと、若者は「無理だ!」と答える。しかし主人が、「それなら、この給料の8割で暮らしてごらん」と言い替えてみると、何と若者は「やってみる!」と答えたのである。
CMではテロップで「人は思い込みにより、事実を正確にとらえていないことがある。〜フレーミンク理論より〜」と続く。「フレーミンク理論〜思い込み床屋篇」と銘打ったかなり前のCMだが、当時話題になったのでご記憶の方もいると思う。
ここに出てくるフレーミンク理論とは行動経済学ではよく語られるもので、フレーム(視点や基準、あるいは表現)を変えることで異なる印象や判断に導かれる、いわゆる“心理的バイアス”である。このCMは、状況や視点を変えただけで、お金に対する意識はガラリと変わってしまうという例であるが、言い換えれば、人は特にお金に関しては、一見、理性的な判断をくだしているようで、実は“無意識化の心理”に左右されているとも言える。
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