エリート集団の裁判所が、「ブラック企業」と呼ばれても仕方がない理由:ああ、絶望(前編)(3/5 ページ)
「裁判所」と聞いて「誠実で公平な人ばかりが集まっている」と想像する人も多だろう。しかし、本当にそうなのか。最高裁などを歴任した瀬木比呂志氏に、ジャーナリストの烏賀陽弘道氏が迫ったところ、信じられない事実が……。
「ブラック企業」と呼ばれても仕方がない
瀬木: 話は少し変わりますが、裁判官の不祥事が目立ち始めました。1970年代から不祥事が出てきて、2000年代以降は、性的不祥事ばかり10件近く起こっています。
こうしたことが起きる背景には、裁判官の能力やモラルの低下があるのでしょう。ただ、それだけではなく、内部の管理・統制システムが原因ではないかと思われます。裁判官は全国に約2900人いるのですが、10年に1度人事局による再任制度、すなわち“リストラ査定システム”をくぐらなければいけません。近年は毎年数人が再任拒否されています。その前に肩叩きで辞めている人もいますね。
再任拒否や肩叩きにあった人は必ずしも能力不足とは限りません。上層部の方針に従わなかっただけ、または、意見が合わなかっただけという人もいるんですよ。
なぜこのような事態に陥ったかというと、管理システムと情実人事が徹底されたから。こうした閉じられたピラミッド型の組織は、いったん腐敗が進むと止めることが難しい。
ちなみに、裁判所の服務規定は明治20年(1888年)に作られたもので、休職はもちろん、正式な有給休暇の制度すらないんですよ。それでも、かつての裁判所は、平均的構成員に一定の能力と識見はあったので「優良企業」だったと思いますが、いまの状況では「ブラック企業」と呼ばれても仕方がありません。例えば、組織の中でパワハラやセクハラがあっても、相談する窓口すらないんですから。
関連記事
- 朝日やNHKが選ばれない時代に、私たちが注意しなければいけないこと
インターネットが勃興し、新聞やテレビといった旧型マスメディアが衰退しつつあると言われている。結果、何が変わったのか。筆者の烏賀陽氏は「ニュース・センターが消滅した」という。その意味は……。 - ブラック企業問題はなぜ「辞めればいいじゃん」で解決しないのか
従業員を劣悪な環境で働かせ、使い捨てにする――。いわゆるブラック企業が社会問題になっているが、なぜそこで働く人は会社を辞めようとしないのか。その背景にあるのは……。 - ブラック企業よりも怖い――「新・ブラック社員」によろしく?
どんなに優秀な社員を投入しても、なぜか生産性が低いまま。しかも、社員が退職してしまう……今日のコラムは、あなたの会社でも起こりうる怖~い実話。その黒幕は「新・ブラック社員」かもしれません。 - NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由
言葉を生業にしているマスコミだが、会社によってビミョーに違いがあることをご存じだろうか。その「裏」には、「華道」や「茶道」と同じく「報道」ならではの作法があるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.