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3Dプリンターで、飛行機づくりはどう変わる?――エアバスの場合秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/2 ページ)

3Dプリンター技術が、旅客機づくりに生かされはじめている。最新鋭機「A350XWB」や、総2階建て機「A380」の製造・組み立てが進むエアバスのハンブルク工場で、開発チームリーダーのピーター・サンダー氏に話を聞いた。

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鳥の骨格を真似た未来コンセプト機


「2050年の旅客機は生体工学的構造になる」と話すサンダー氏

 旅客機の開発・製造では、燃費効率を上げるためにいかに部品を軽量化するかが大きなテーマになる。1回のフライトごとに、売上額の3割が燃料費に消えてしまうからだ。

 「部品を作るとき、従来の製造方法では材料の8〜9割が削りくずになっていましたが、3Dプリンターなら素材の9割を有効使用できます」とサンダー氏は続ける。「3Dプリントした部品は来年(2016年)から実機への搭載がスタートする予定で、その後は補修用スペアパーツの在庫を減らせることも期待されています。何万点もの部品をいちいち揃えておかなくても、必要なときに必要な場所で3Dプリントできるようになりますから」

 ハンブルク工場には巨大な建屋が並び、世界最大の総2階建て旅客機A380などの組み立て作業が進んでいる。その一角で3Dプリンター技術の実用化に挑むサンダー氏の構想は、部品づくりだけにとどまらない。「このデザインを見てください」と言って、彼はツタがからまったような骨組み模型を目の前に置いた。エアバスが発表した近未来のコンセプト機だ。「2050年の旅客機は鳥の骨格を真似た、生体工学的構造になる」とサンダー氏。この模型も、彼のチームが3Dプリンターで仕上げた。


近未来機ではガラス張りの機内から景色が楽しめる(出典:Airbus)

 「金属パーツの3Dプリント生産は、ドイツが世界の先頭を走っています。私たちもドイツにある工場で研究を続けてきたからこそ、この技術をいち早く採り入れることができました」

 近未来機の骨格モデルを、私も手に取ってみる。上下左右、どの角度から眺めても極めて精巧な作りだ。そんな時間が数分続き、熱心に見入る私の顔がサンダー氏には“物欲しげ”に映ったのか、彼はにっこり笑って「取材にくると聞いて3Dプリントしておきました。お土産にどうぞ」とミニチュア版を持たせてくれた。


「お土産に」といただいたこのミニチュア版も3Dプリンター製だ
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