増収とトラブル解消の一石二鳥、JR東日本「座席未指定券」の狙いは?:杉山淳一の時事日想(4/4 ページ)
上野東京ラインの開業で、今まで上野止まりだった常磐線の特急が品川駅まで乗り入れる。この新しい常磐線特急には自由席がない。その代わりに「座席未指定券」という新しい特急券が販売されるのだ。この仕組みは今後の特急列車の標準となるかもしれない。
指定席/自由席トラブル解消効果も期待できる?
指定席に関するトラブルは冒頭の二重発券だけではない。最近では次の記事「新幹線の混雑時、指定席車両に自由席の乗客が…これってあり?」(関連リンク)が話題となった。指定席に自由席の客を入れる状態は賛否両論だった。しかし、全車指定席車両と座席未指定券の組み合わせの場合、自由席の客はいないからこんなトラブルは起きない。
これもJR東日本の商売のうまさだ。座席未指定券を持って乗った列車が満席だった場合、座れなくても料金はそのままである。報道資料(関連リンク)には「座席未指定券は、満席の場合でもご購入いただけます。その場合デッキ等をご利用ください。車内に空席があればお座りいただけます。満席を理由とした払い戻しはできません。」とある。
従来は混雑時に指定車両に立ち入れる「立席特急券」を発売する場合があった。値段は特定特急料金や自由席特急料金と同じだった。今後は座れなくても指定席料金だ。さすがにクレームになりそうだ。混雑時は車両数を増やし、座席数にゆとりを持たせる必要があるだろう。
このほかにも「指定席 自由席 ずるい」で検索すると(笑)、指定席トラブルのエピソードがたくさん出てくる。中でも、自由席車両で座れなかった妊婦さんが指定席にやって来て、巨漢のため指定席を2つ確保して乗っている乗客に「1つ譲れ」と命令口調だった事例にはあきれた。これ、妊婦さんも図々しいけれど、巨漢もアウト。規則では乗客一人で2座席を利用できない。こうしたトラブルも座席未指定券の設定や、自由席の廃止で解消できそうだ。妊婦さんは座席未指定券を持っていれば、空席に座る権利がある。
もとより国鉄時代から特急列車は指定席が原則。自由席の設定は新幹線の開業後、全国に在来線の特急網を整備し、手軽に特急列車に乗ってもらおうという増収策だった。急行列車を特急列車に「格上げ」し、自由席主体の急行列車が減ったための救済策もいえた。
そして今、JR東日本は着席重視、特急列車は指定席が基本という施策に戻したともいえる。座席の指定状況ランプの整備などが必要だから、すぐにすべての列車がこうなると言えないけれど、いずれ特急列車から自由席は消えていくのかもしれない。
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