なぜ、いま「羽田空港関連の鉄道建設」が盛り上がっているのか:杉山淳一の時事日想(1/4 ページ)
羽田空港への鉄道整備計画が活発だ。JR東日本は貨物線を使う都心アクセス路線を計画。政府は都営浅草線の新線を構想し、東急蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶ路線計画もある。しかし、どれも東京オリンピックに間に合いそうにない。そこで杉山氏が提案するのは……。
杉山淳一(すぎやま・じゅんいち)
1967年東京都生まれ。信州大学経済学部卒。1989年アスキー入社、パソコン雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年にフリーライターとなる。PCゲーム、PCのカタログ、フリーソフトウェア、鉄道趣味、ファストフード分野で活動中。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。2008年より工学院大学情報学部情報デザイン学科非常勤講師。著書として『知れば知るほど面白い鉄道雑学157』『A列車で行こう9 公式ガイドブック』、『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。 日本全国列車旅、達人のとっておき33選』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」、Twitterアカウント:@Skywave_JP。
東京モノレールは2014年7月から新型車両「10000形」を運行する。1989年から1996年までに製造された1000形を順次置き換える予定だ。1989年と言えば25年前である。東京モノレールは運河の上を走るため、塩害もあるはず。今が交換の潮時だろう。10000形は最新の鉄道車両の技術を導入しており、車両情報を管理して故障を早期に察知する機能などを備えた。省エネルギー化も実現している。
利用者にとってはLCDによる案内表示システムがありがたい。羽田に着き、とりあえずモノレールに乗れば、その先の鉄道路線の運行情報が分かる。どこかで運休が発生しても、列車の中で迂回ルートを検討できるのだ。さらに、大型スーツケース置き場も新設され、向かい合わせシートの座席間隔も拡大した。
今後引退していく1000形は成田空港開業の11年後、つまり羽田空港が国内線専用になってから走り始めた車両だ。次の形式の2000形は1997年に登場した。羽田空港の国内線第2ターミナルビルの開業に備えた増備で、1992年に開業した天王洲アイル駅への通勤需要も満たすため、ロングシートを増やしたのが特徴だ。
10000形は、2008年に羽田空港で再び国際線定期便が就航してから初の新型車両となる。大型スーツケース置き場や向かい合わせシートの改善は、国際線利用客に配慮した設備だ。つまり、10000形は国際線に本格的に対応した車両といえる。
羽田空港絡みの鉄道投資が盛り上がるワケ
今、羽田空港周辺の鉄道投資が盛り上がっている。
JR東日本が貨物線を再利用した新しいアクセス路線を構想したり、国土交通省が都営地下鉄浅草線をバイパスして羽田と成田を最速で結ぶ新線を計画したり、東京都大田区が東急電鉄蒲田駅と京急電鉄蒲田駅を結ぶ新線、通称「蒲蒲線」を羽田空港アクセス路線として提案するなど、各社とも積極的に動いている。
なぜ、こうも羽田空港周辺に新線構想が集中しているか。答えは単純だ。今、日本で成長と収益が期待できる鉄道路線が羽田空港周辺しかないからだ。
国土交通省は現在、交通政策審議会が新しい鉄道整備計画を審議している。旧運輸省が設置した運輸政策審議会による「東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備に関する基本計画について」、いわゆる「答申18号」の目標年度が2015年だったため、新たな基本政策を策定する予定だ。
この資料は国土交通省のWebサイトで公開されている(参照リンク)が、この中の「交通政策基本計画の策定に当たり鉄道分野で留意すべき事項について」という項目で、冒頭に少子高齢化について触れている。これは「これから人口は減る一方。それを前提に計画を考えよ」というメッセージだ。この図を見せつけられると、新線建設計画の提案には慎重にならざるを得ない。
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